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ファナックの「協働ロボット」が他社では作れない理由

センサーの働きを引き出すのは難しく。30年の研究の成果
ファナックの「協働ロボット」が他社では作れない理由

CR−35iAで自動車のスペアアタイヤをセット(左が稲葉専務)

 2015年春、ファナックの次世代ロボット「CR―35iA」が、産業用途の新製品としてはかつてないほど大きな注目を浴びた。前年にコンセプトを公開した人と協働できる”緑のロボット“の量産版。試作機から大幅に進化した姿は、ユーザー企業、そして競合他社をも大いに驚かせた。最大の特徴は質量35キログラムまでの物体に対応する搬送能力。人との協働を実現する安全機能を内蔵しながら、重量物を運べるロボットはそれまで存在しなかった。

 開発期間は約3年。「時間をかけたくなかったが、やはり困難もあった」と、ロボット事業本部長の稲葉清典専務は振り返る。ポイントは垂直多関節型の協働ロボットでは業界最高の搬送能力だ。協働ロボットは人と接触するとセンサーの働きで自動停止し、安全を確保するタイプが主流。

 だが、大パワーにすればセンサーがロボット側の力も検知し、平常時でも停止してしまう恐れがある。「35キログラム可搬のハードルは、かなり高い」と安部健一郎執行役員ロボット研究所副所長は断言する。

 事実、協働ロボットの開発で先行した欧州の競合も、CR―35iAに匹敵する重可搬のロボットは製品化していない。ドイツのクカは同14キログラム、デンマークのユニバーサルロボットは同10キログラムが最高値。「30年近くセンサーを研究してきた当社ならではの製品だ」と安部副所長は胸を張る。

 狙うのは重筋作業の補助用途だ。「15キロ―20キログラム程度の製品を扱う作業は多く、作業者の負担になっている。アーム先端に付ける機器の重さを考慮すると35キログラム級の可搬質量が必要」(稲葉専務)という。

 投入以来、計画を上回るペースで受注を獲得。特に自動車産業向けの販売が好調だ。車の最終組み立て工程はまだ大部分が人手作業だが、ロボットの導入により現場の負担を大幅に軽減できるという。現在、ユーザー各社が量産工程への導入に向け、検証している状況。「検証期間は大抵1―2年。つまり今年の夏以降、一挙に伸びる可能性がある」と稲葉専務はほほえむ。
(文=藤崎竜介)

※「協働ロボット FANUC Robot CR−35iA」は第58回十大新製品賞で最優秀の「増田賞」を受賞
日刊工業新聞2016年1月28日機械面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
入社して5年目に2年間ほどファナックを担当したことがある。1カ月に1度、忍野村の本社に取材に行っていた。さすがに最初は驚いた。施設の広さや充実度もさることながら、いろいろなものに黄色を使っている「黄色」へのこだわりに。有名な話だが、なぜコーポレートカラーが黄色かと言えば、富士通の一事業部時代に、事業部ごとの報告書などが区別しやすいように色分けされていて、それが黄色だったのが始まり。なので最初に「緑のロボット」を出してきた時はびっくりもしたが、次のステップへ進もうとするファナックの強い意思も感じた。

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