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独自AIも生かす…ホンダが特例子会社で推進、働く環境作りの根底にある発想

独自AIも生かす…ホンダが特例子会社で推進、働く環境作りの根底にある発想

ペンを所定位置に固定したまま、チューブを回転してマーキングできる治具

ホンダ太陽(大分県日出町、鎌田雅仁社長)は、ホンダやそのサプライヤー向けの部品製造やデザイン、購買などに関するデータ業務を担うホンダの特例子会社だ。従業員245人のうち、障がい者は約6割の148人(9月1日時点)。製造ラインや治具にはユニバーサルデザインを採用し、さまざまな障がいを持つ人、障がいを持たない人が一緒に働くことができる環境づくりを進めている。

「まずは自助努力。障がいがあるからと甘えてはいけない。その上で、お互い助け合いをしていく」鎌田社長はホンダ太陽の方針をこう説明する。

ワイヤハーネス(組み電線)などの製造ラインは、機械や作業台の高さを低くすることで、足に障がいを持つ人が座ったまま作業しやすくしている。通路は車いすが3台通ることができる幅を確保。緊急時に備えるほか、会話がしやすい環境を整えている。

治具の改良にも取り組む。例えばチューブを回転させながら印を付ける作業は、指の力が弱い人や手が震える人には難しい。そこで、閉じるとチューブが回転する治具を開発。ペンを固定したままマーキングできるようにした。「全自動化はせず省力化に重点を置き、安全、低コストかつシンプルな方法で改造を図っている」(担当者)。障がい者の目線で改良することは、全ての人が効率的で高品質なモノづくりをすることにつながるとの発想が根底にある。

聴覚障がい者のコミュニケーションで活躍しているのが、ホンダ独自の人工知能(AI)による音声認識を用いたシステムだ。マイクに向かって発言した内容をテキスト化し、タブレット端末などに表示する仕組みだ。

AI音声認識システムを用いてホンダ太陽などが開発した、聴覚障がい者向けコミュニケーション支援ツール

従来、聴覚障がい者と健聴者の主なコミュニケーション手段は筆談だった。ただ会議などの際、筆談で正確に内容を伝えるのに時間がかかる点が課題となっていた。先端科学技術の研究開発を手がけるホンダ・リサーチ・インスティチュート・ジャパン(埼玉県和光市)とホンダ太陽が共同開発し、20年から同システムを導入。会議時間の短縮や、職場の一体感醸成などに役立っているという。

車両電動化で、扱う部品などは変化する可能性もある。その中で「機械化できない仕事を確保していく」と鎌田社長は力を込める。(江上佑美子)

【ポイント】
 お互いの違いを生かした職場環境づくりを進める上で重視するのが、コミュニケーションだ。事務所には従業員の写真や名前を紹介するボードを設置。あいさつなどで活発に声を掛け合い、職場の課題についても意見を出し合っている。

日刊工業新聞2022年10月6日

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