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腕時計「アテッサ」搭載の21年ぶり新色、シチズンは「深い青色」をどう生み出したか

シチズン時計はダイヤモンドライクカーボン(DLC)を応用した表面硬化技術「デュラテクト」において、独特の深い青色を素材表面に施す新色を開発した。これまでは黒のみで21年ぶりの新色となる。従来のDLCの傷つきにくさや滑らかさといった機能を維持したまま、DLCの多色化を目指して開発した。まず腕時計「アテッサ」に搭載、数量限定で11月10日に発売する。今後は受託加工においても時計以外の用途展開について検討を進める。

青色の開発にあたり、まずダイヤモンドに性質を寄せることで透明に近いDLC膜を開発した。DLCはダイヤモンドとグラファイト(黒鉛)の中間の性質を持ち、炭素のつながり方次第で黒色にも透明にもなる。

開発した透明に近いDLC膜を、既存の黒色のDLC膜上に成膜して重ねた。そこへ光を当てると、透明のDLC膜表面で反射する光と、透過して下の黒いDLC膜表面で反射する光に分かれて、互いに干渉し合う「薄膜干渉」が発生する。膜の厚みによって、特定の波長が強くなったり弱くなったりすることで色が変わるが、数十ナノメートルレベルで膜の厚さを均一に制御する技術を用いることで、青色の波長を強め、新色の開発に成功した。薄膜干渉はシャボン玉や水上の油面と同様の現象。

DLCのみを用いて青色を生み出すため、傷つきにくさなどの機能は従来のDLCと同レベルを維持する。

シチズン時計のDLCは、耐久性、耐食性、耐金属アレルギーなどの特徴を持つ。また時計部品のような複雑形状でも均一に膜が付く。2001年から腕時計にDLCを採用する。今回の新色の開発でデザインのバリエーションが広がる。

日刊工業新聞2022年10月6日

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