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熟練者不足にコロナの大打撃…老舗の製缶業者が突然事業を停止した顛末

6月27日午後、老舗の製缶業者・田岡製罐が突然事業を停止し、東京地裁へ自己破産を申請、開始決定を受けた。

同社は1912年創業の製罐業を前身とし、65年10月、東京都荒川区で法人化。62年には埼玉県八潮市に工場を完成させ、実質本店も同所に移転した。しょうゆ、食用油、調味料などの食品製造業者や工業材料製造業者を主要得意先として業務用18リットル缶の製造を手がけてきた。創業者のひ孫にあたる田岡剛氏は2008年に代表に就任。

東日本大震災で被災した同業者の代替需要という特需や9リットル缶の需要掘り起こしで、08年12月期に17億4800万円だった年商を、12年12月期には20億9600万円に伸長させた。

しかし工場長の退職に伴い13年ごろから製品の品質が低下しクレームが発生した。熟練の技術者が少なく、不良品の発生による製造ロスやクレーム対応が収束しない状況が続き、16年12月期には年商16億円にまで落ち込んだ。

これに伴い借入金が増加、08年12月期末で7億円ほどだったものが、14年12月期末で12億円を超えた。同年には埼玉県中小企業再生支援協議会(当時)の支援下となり取引金融機関への返済をリスケジュールし、再建計画をもとに立て直しを図っていた。

20年、新型コロナウイルスが感染拡大し飲食店、外食産業が大打撃を受けたことで、主力の食品・食用油向け18リットル缶の受注が大幅に減少。21年12月期の年商は12億円にまで落ち込み、融資を受けたコロナ資金も運転資金としてほどなく費消した。

そして22年春、売り上げの過半を占める主力得意先から取引中止の申し出を受ける。これが致命傷となった。さらに鋼材価格の高騰。作っても利益が出ない状況となるなか、6月末の決済が困難となったことで破産申請を決断、長年の業歴にピリオドを打った。(帝国データバンク情報部)
日刊工業新聞2022年10月6日

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