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「中国IT」に存在感、日本企業はどう向き合うか

2000年代前半まで日本のシステム構築(SI)会社によるオフショア(海外委託)開発が盛んに行われた中国。直近は地政学リスクなどの影響でオフショアは縮小傾向にある一方、IT大手4社「BATH」の台頭など、技術力で注目を集める。人材不足や海外市場開拓が課題の日本は中国の存在を無視できない。ただ、中国内のIT人材は米国などへの就職を希望する傾向にあるという。日本企業はこうした現状を踏まえた上で中国と向き合うことが求められる。(狐塚真子)

中国では巨大IT企業への規制など、政治の影響が少なからずビジネスにも波及している。人材派遣を手がけるヒューマンリソシア(東京都新宿区)の入江直樹取締役は「皆が『稼げるときに稼がないと』という意識を持っている。ビジネスのはやり廃りは早いが、スピード感をもって取り組めるのは良い点だ」と同国ビジネスの特徴を分析する。

電子商取引(EC)や電子決済といった技術の発展・実装はめざましく、現地企業と連携する日本企業も増えている。一方、ソフトウエアの安全保障の観点からは、米国輸出管理規則(EAR)の影響が生じる可能性もあり、日本企業は同国IT人材の活用を再検討するタイミングとも言える。

人口が多く、技術も発展する中国市場を無視することはできないが、「中国内で日本企業への就職を希望する人の絶対数が減っている」(ヒューマンリソシアの今関彰範GIT事業本部長)ことも事実だ。同社が19年に現地で行った採用セミナーでは「中国か米国企業に就職したい人が多く、日本企業の優先順位は3―5番目だった」(入江取締役)という。

中国のトップ級の大学を卒業した人材の給与が上がっており、日本企業の給与体系や生活水準を考えても、高度人材が日本国内で働く利点は考えにくい。リモートでも仕事ができるようになった現在では、なおさらだ。

デジタル分野における日本の競争力低下も鮮明になってきている。スイスの国際経営開発研究所(IMD)が発表した「デジタル競争力ランキング」2022年版では、日本は世界63の国・地域の中で29位。21年から順位を一つ落とし、シンガポール、韓国、台湾などにも後れをとった。

ヒューマンリソシアの入江取締役は「従来日本は、中国をオフショア先と捉えていたが、その構造はむしろ反転している。意識を変えなければ痛い目に遭う」と警鐘を鳴らす。また今関事業本部長は海外人材について「日本に留学し、生活様式や文化、仕事の進め方などを理解してもらった上で就職してもらう」ことが長く働いてもらうカギだとする。日本企業の中国ITビジネスへの向き合い方が問われている。

日刊工業新聞2022年10月6日

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