ニュースイッチ

核融合発電へプラズマ変化を毎秒2万回捕捉する温度計、核融合研などが開発した意義 

核融合科学研究所の安原亮准教授、舟場久芳助教、上原日和助教らは米ウィスコンシン大学と共同で、核融合発電実現に向け、プラズマ変化を1秒間に2万回の高速で捉えられる温度計を開発した。強力な光を高速で何度も繰り返し発生することのできる高性能レーザー装置により、従来の600倍以上の速さでプラズマの電子温度と電子密度の計測を実現した。

核融合発電では、高速で変化する高温プラズマを精密に計測して制御する必要がある。開発した計測手法により、プラズマ中で起こる突発現象の理解が進み、制御手法開発が期待される。

プラズマでは、プラズマ中の電子にレーザー光を照射し、発生する散乱光を観測する「トムソン散乱計測」により、電子温度・密度を求める。この時、レーザー光のパルスを繰り返し入射するが、従来は1秒間に30回しかできなかった。

今回、1秒間に2万回の高速繰り返しが可能なレーザーを新たに開発し、これと高速のデータ収集や解析手法を合わせ、時間分解能を高めたトムソン散乱計測装置を実現した。

高速繰り返しをすると、レーザー媒質で発熱して温度差が生じて光がまっすぐ進まず、レーザー光の出力低下や媒質破損を引き起こす熱光学効果が起こってしまう。

研究チームは、媒質内に温度差が発生する前の5ミリ秒という短時間に励起光を与えてレーザーパルスを媒質から取り出す動作を複数回行うことで温度分布を均一にし、熱光学効果を回避することに成功した。

日刊工業新聞2022年10月6日

編集部のおすすめ