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半導体不足の影響ここにも…「白ナンバー」飲酒検査の義務化延期で戸惑いの声

10月に開始予定だった、白ナンバー(自家用)車両を使う事業者に対するアルコール検知器を用いた検査の義務化が延期となった。半導体不足などの影響で、検知器の供給が需要に追いついていないのが理由。需給逼迫(ひっぱく)解消のめどが立たない状況を踏まえ、警察庁は適用見送りを「当分の間」とし、具体的な時期を示していない。ITや電子機器、損害保険など幅広い分野の企業がアルコール検知器や確認の記録に関する商品の投入を活発化する中、戸惑いの声も聞かれる。

警察庁が飲酒運転の対策強化に踏み切ったきっかけは、2021年6月に千葉県八街市で飲酒運転の白ナンバートラック運転手が起こした事故だ。道路交通法の規則改正で緑ナンバー(事業用)車両に加え、一定台数以上の白ナンバー車両を保有する事業所もアルコールチェック義務化の対象となった。事業所の安全運転管理者は、目視などでの運転手に対する確認と記録を4月から義務付けられている。

10月には検知器を用いた確認が義務化となる予定だった。しかし携帯型のアルコール検知器を製造する中央自動車工業は「マイコンなどの半導体が不足している。増産に動いているが、納期が1年ほどかかる製品もある」と話す。

パイオニアは9月末、自社のクラウド型運行管理サービスに検知器との連携機能を追加した。大野耕平マーケティング課長は「記録などに関する安全運転管理者の手間を軽減したい」と狙いを説明。一方で「検知器の性能は問われていない。運転手のなりすましのリスクについても、モラルに頼っている」と指摘する。

酒気帯び確認記録などのサービスを拡充しているスマートドライブ(東京都千代田区)の南條匡紀シニアアカウントエグゼクティブも「管理者の業務負担が極めて大きくなっている。顧客からは現実的ではないとの声を聞く」と漏らす。

義務化の時期が示されていないことに関しても「めどを示さなければ形骸化する」(機器メーカー)。交通安全への機運は高まる一方、課題は多く残されている。

日刊工業新聞2022年10月6日

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