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ホンダが軽「N-WGN」で初採用、新たな安全機能の全容

ホンダが軽「N-WGN」で初採用、新たな安全機能の全容

新「N-WGN」(左が高石エグゼクティブチーフエンジニア)

ホンダは、誤ってアクセルペダルを踏み込んだ際に急加速を抑制する機能を、軽自動車に採用した。一部改良して23日に発売した軽自動車「N―WGN」にホンダ車として初めて採用した。急加速の抑制機能自体は既存車両に搭載済みだが、新機能は平場の駐車場や岸壁など、衝突の対象物がない場所でも作動するようにした。2021年に発表した「50年に全世界においてホンダ車が関与する交通事故死者をゼロにする」との目標達成に向け、着実に歩を進めている。(江上佑美子)

安全運転支援システム「ホンダセンシング」に、ペダルの踏み間違いによる誤加速を防ぐ新機能「急アクセル抑制機能」を追加する。23日に一部改良して発売したN―WGNが第1弾となる。

急アクセル抑制機能ディスプレー

前方や後方の障害物をカメラなどで検知した場合に急発進を抑える機能は既に標準装備しているが、駐車場や岸壁など遮るものがない場所では作動しなかった。

新機能では、急激なアクセル操作など「踏み間違い」とシステムが判断した場合に音とディスプレーで警告し、微速で進むクリープ走行を維持。踏み続けた場合も時速30キロメートルまでしか加速せず、ブレーキペダルとの踏み間違えによる事故を防ぐ。同様の技術はトヨタ自動車などが導入済みで、ペダルの踏み間違い事故の撲滅に向けた動きが広がってきた。

交通事故死者ゼロの達成に向け、研究開発子会社の本田技術研究所で安全安心・人研究ドメインを統括する高石秀明エグゼクティブチーフエンジニアは「起きた事故の被害軽減だけでなく予防に関する技術も必要」と指摘。急アクセル抑制機能搭載はその一環だ。

ホンダは14年にホンダセンシングの展開を始めた。車が車線からはみ出したり先行車や歩行者と衝突したりするのを回避する機能を搭載し、21年には新車採用率が97%となった。交通事故総合分析センターとホンダが算出したデータによると、ホンダセンシング搭載車は非搭載車と比べ、追突事故発生率が82%、歩行者事故発生率が56%低いという。

自動車メーカーは安全技術の開発や訴求を進めている。一方で運転手が機能を過信するリスクや車両価格の上昇につながる面もある。高石エグゼクティブチーフエンジニアは「技術が進化するだけでは意味がない。信頼性について正しく伝え、価格とのバランスをとることで普及を目指したい」と話す。

日刊工業新聞2022年9月23日

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