販売計画の4倍超、受注好調のマツダ「CX-60」の目を引くポイント
マツダの新型クロスオーバースポーツ多目的車(SUV)「CX―60」の受注が想定を大幅に超えている。6月から国内で予約を開始し、11日時点の受注は月間2000台の販売計画の4倍を超える8726台となった。同車は新たな旗艦車種として期待される後輪駆動(FR)方式の「ラージ商品群」の第1弾。マツダの今後を占う戦略車に記者が試乗した。(広島・青木俊次)
マツダはこのほど、報道機関向けに市街地や高速道路など、日常使いを想定した試乗会を広島市内で開いた。試乗会では、先行販売している排気量3300ccの直列6気筒ディーゼルエンジンと48ボルトモーターを組み合わせたハイブリッド車(HV)「e―SKYACTIV D」と、比較車として、CX―60より小さいSUV「CX―5 XD」に乗車した。
操作性では、駐車や車庫入れ時、周囲の見落としや接触を防ぐ新装備「シースルービュー」が目を引いた。
運転席から見えない死角をカメラで補い、前後・両サイドのリアルタイム映像を車載ディスプレーの一画面に統合・立体化し、予想進路まで表示する。
実際にバック駐車すると、ハンドルの切り方で周囲との接触が簡単に想定され楽に駐車できた。さらにエンジンを縦置きにしたことで、最小回転半径をCX―5より10センチメートル小さくしている。
市街地では大排気量ディーゼルエンジン特有の振動や音は、ほぼなく、弱点とされていた発進時など低速・低負荷領域も、48ボルトモーターでCX―5より約200キログラム重いことを感じさせない。
高速道路へ上がる坂道の進入路では力を最も伝えやすいFRにより、アクセル以上の加速感が味わえる。本線ではエンジンなどの配置による剛性の高さから、直進性や地面に張り付く安定感も強く感じた。
CX―5より大きく重い車格を大排気量エンジンで十分にカバーした上で、WLTCモード燃費は1リットル当たり21・1キロメートルと、CX―5(同16・6キロメートル)をはるかにしのぐ。さらにこの車種では「ドライバー異常時対応システム(DEA)」を装備しており、安全性をさらに高めている。
CX―60は、CX―5の上位機種に当たり、CX―5からの乗り換えや上級志向の顧客をメーンターゲットとする。商品本部の和田宜之CX―60主査が「今後の一時代を築き、ブランドをもう一段ステップアップする戦略的商品群」と位置付ける「ラージ商品群」の第1弾となる。電動化の移行期にあって内燃機関の有用性を示しつつ、ブランド力を高めるという重責を担う。
12月にはガソリンエンジンに大容量バッテリーと大型モーターを搭載したプラグインハイブリッド車(PHV)など3車種を投入予定で、ラインアップがそろう。今後のCX―60の受注動向がマツダの中長期の成長を左右する試金石となる。
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