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産業革新機構のシャープ支援固まる。「世界で勝てる再編」か説明が必要だ

政府系ファンドが大立ち回り
 政府系ファンドの産業革新機構が、経営再建中のシャープに出資することが固まった。出資後にシャープの液晶事業を分社し、革新機構の肝いりで生まれた同業のジャパンディスプレイと統合する方向。また白物家電事業についても東芝と統合する構想が報じられている。電機業界の大型再編の中心に政府系ファンドがいることに、違和感を覚えずにいられない。

 革新機構は2009年に経済産業省主導で発足した。民間ではカバーしきれないリスクを国が引き受け、成長資金を市場に供給するのが目的だ。その具体的な手法のひとつが新陳代謝の進まない業界の再編の起爆剤になること。”オールジャパン“で世界市場に打って出ることを目指している。

 こうした投資の条件は、世界市場で勝てるかどうかである。業界再編によって世界トップ級を狙える投資に限るというのが基本方針でなければならない。投資能力2兆円という巨大な政府系ファンドは、一歩間違えば民業圧迫や国費の無駄遣いだと批判される。それだけに同機構も経産省も、細心の注意を払って出資を成長資金の供給に限定してきた。

 シャープとの協議は最終局面にあるが、この投資が実現した場合、関係者は「世界市場で勝てる」という条件に合致したものかどうかをきちんと説明する義務がある。もし「大きすぎるから、つぶせない」といった理由だけで経営危機の企業を救済したのであれば、モラルハザード(倫理観の欠如)の批判を免れない。

 「革新機構は日本の不完全な資本主義と民主主義のはざまに生まれた”あだ花“だ」―。創設に関わった経産省幹部はそう話す。必要悪であり、いずれ消えるべき存在という意味だ。同機構は25年までに保有株式を全て放出することが法律で決まっている。回収期間を考慮すると、残る投資期間は長くて4年程度となる。

 雇用維持や海外への技術流出阻止も国益の観点では重要だ。しかし革新機構はあくまで経済合理性に基づく企業再生や業界再編を目指してきた。”便利な再編の道具“であってはならない。
日刊工業新聞2016年1月25日「社説」より
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
う~ん、メディアもダブルスタンダード。最後は革新機構に落ち着くことは分かって報道していた。経産省も含め国策なら国策と堂々とそう明言すればいい。東芝の家電子会社などは実質債務超過であり、救済ファンドなんだと(一方でベンチャー投資もしている)。ルネサス救済の時もさんざん叩かれたが、一定の再建に成功した。出口戦略で、CEOを実質交代させるなど迷走気味だが。一方で、大型の案件を手がけられる民間の再生ファンドが国内に少ない事実もある。再生ファンドを育てるなら、そういう施策をしっかりとるべきだろう。

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