ヤフーが事務局、必要な支援物資“必要な量”届ける「緊急災害対応組織」の貢献
豪雨や地震などの自然災害が多発しており、復興支援も企業の社会的な役割となっている。被災者に支援物資を提供したいと考える企業も多いが、過剰に届けると復興をさまたげることもある。ヤフーが事務局を務める緊急災害対応アライアンス「SEMA」は、企業間で調整して必要な物質を届ける機能を持つ。2017年8月に発足後、5年間でいくつもの大規模災害の復興に貢献した。
8月上旬、新潟県北部と東北地方は記録的な大雨に見舞われ、河川の氾濫や土砂災害が起きた。SEMAは被災地で被災家屋の片付けに当たるボランティアに飲料水やおしぼりを送った。
現地で活動中の市民団体からボランティアの分が必要だという情報が届き、SEMA事務局が支援物資を決めた。軍手もリストにあったが、途中で取り下げた。市民団体からの情報で現地側で入手できたと分かったためだ。刻一刻と変わるニーズに合わせ、必要な物資を届けるのがSEMAの役割だ。
支援物資はSEMA加盟者が提供する。17年8月の設立時、アスクルやキリンホールディングス、グンゼ、レンタルおしぼりのFSX(東京都国立市)など17社が参加した。現在は70社に増え、「ADRA Japan」など災害支援を専門とする市民団体6団体も加盟する。
設立の目的の一つが被災地を適切に支援し、地域経済の早期復興に貢献することだ。11年の東日本大震災や16年の熊本地震で必要以上の物資が被災地に届き、保管や仕分けが自治体職員の負担となった。また一部の避難所に支援が集中し、被災地で物資の過不足も起きた。
ミスマッチを防ぐためSEMAは市民団体が被災地のニーズを収集し、SEMA事務局に伝える。事務局は企業に支援依頼を一斉に出し、提供できる企業が物資を送る。
18年の西日本豪雨では水・飲料2万7701リットルや衣料品1万2763着のほか、衛生用品やタオルを被災地に送った。19年に千葉県などに台風被害が発生した時、破損した屋根に敷くブルーシート99枚を手配した。同年の佐賀県豪雨ではウレタンマットも届けた。
支援方法が分からない企業もSEMAに参加することで、早期復興に貢献できる。SEMAは現地で支援物資を配る様子を撮影し、企業に写真を提供する。企業は広報などに写真を使用できるので、ブランド向上につながる。国連の持続可能な開発目標(SDGs)は災害に対するレジリエンス(回復力)向上を掲げており、企業はSDGs活動の実績としても報告できる。
ヤフーSR推進統括本部の藤岡久子氏は「幅広い企業に長く関わってほしい」と語る。支援活動の報告会や勉強会で企業が集まる機会を設けており、「知り合った企業同士の連携で新しい支援や製品が生まれることを期待している」と話す。
加盟社・団体数は増えたが支援物資の種類は十分とはいえない。事務局では公的支援で不足しがちな化粧品や女性用品、メンタルケア関連の商品・サービス、豊富な食品を必要と考える。また幅広い商材を扱うホームセンターの加盟も期待している。