脱炭素に向けた取り組みが各国で進み、再生可能エネルギーや水素などの利用が進むと期待されている。選択肢の一つとして、二酸化炭素(CO2)と水素を反応させメタンを作る「メタネーション」の取り組みが国内で盛んだ。大阪ガスは微生物を利用し生ごみを分解・発生させたガスと水素を反応させメタンを作るプロジェクトを開始。2025年の大阪・関西万博での実証に向けた準備を進め、社会実装を目指す。(大阪・冨井哲雄)
メタネーションは再生可能エネルギー由来の水素とCO2を使うため脱炭素につながると期待される手法。合成されるメタンは都市ガスの主成分となるため、配管など既存のガスインフラをそのまま活用できる。
大ガスは微生物の力を借りたメタン製造技術「バイオメタネーション」の研究開発を進める。大ガスはバイオガスの研究開発を通じ独自の発酵技術を磨いてきた。バイオガス製造装置内では、多種類の細菌による発酵で複数の化学反応が起きCO2やメタンが発生する。バイオガスの構成比はメタンが6割、CO2が4割。バイオメタネーションではその混合ガスに水素を加えガス中のCO2をメタンに変えることで、高濃度のメタンを取り出す。実験室レベルの実証で1日当たり1リットル規模のメタン製造に成功した。
既存のバイオガス製造装置を利用できるため、新しいメタネーション装置が不要。既存のバイオガス製造プラントへの導入障壁が下がると期待される。
開発の責任者であるカーボンニュートラルメタン開発チームの横山晃太マネジャーは「50年のカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)に向け、再生エネ由来の水素を材料にし都市ガスの脱炭素化に取り組みたい」と強調する。
実証の場として期待されるのが大阪・関西万博だ。会場から出る生ごみを発酵し生成したバイオガスと再生エネ由来の水素を合わせたメタネーションを実施。製造したメタンを配管で運び、熱供給設備やガス調理機器などで利用する計画だ。1日1トンの生ごみから得られるバイオガスなどから170世帯に相当する1時間当たり7立方メートルのメタンを製造。CO2削減効果は年間108トンを見込む。万博を通じバイオメタネーションを世界にアピールしたい考えだ。
プロジェクトには日立造船が従来技術である触媒メタネーションを、大ガスがバイオメタネーションを担当し、両技術を組み合わせたシステムを設計。万博での実証に向け準備を進める。
「バイオガスの製造技術は確立されているが、大型設備内でバイオガスと水素を混ぜた時にどうなるかは分からない」(横山マネジャー)。今後、既存手法での発酵に影響を与えない技術の開発や検証が必要になる。万博での実証結果を踏まえ段階的なスケールアップを視野に入れる。
脱炭素社会の到来に向けバイオメタネーション技術を社会実装できるか。万博での実証が実現のカギとなる。