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自動運転ロボで夜景ツアー、ZMPが提案する「観光×ロボット」のカタチ

自動運転ロボで夜景ツアー、ZMPが提案する「観光×ロボット」のカタチ

夜の新川公園を走行するラクロ

ZMP(東京都文京区、谷口恒社長)は、1人乗り移動支援ロボット「ラクロ」を使って新しい観光スタイルを創る取り組みを始めた。第1弾として19―21日、東京都の隅田川沿いの夜景をラクロに乗って楽しむ観光ツアーを開催。自動運転ロボットは、2022年4月に成立した改正道路交通法で位置付けが明確化された。改正法の施行をテコに、自動運転ロボットの普及・拡大につなげる。

「こんにちは。ロボットが走行しています」「右に曲がります」―。ラクロが周りの通行人に自ら注意喚起しながら、あらかじめ設定されたルートを自動走行する。時速4キロメートル程度で、薄暗い場所や人通りの多い歩道、坂道も難なく走る。高性能センサーの3次元(3D)LiDAR(ライダー)やステレオカメラで周りの状況を認識するので、看板や電柱などの障害物も容易に回避できる。

ツアーは隅田川に架かる中央大橋や川沿いに整備されている新川公園など約1・2キロメートルのコースを巡る。参加した東京都中央区勝どきに住む男性は「ラクロが走っているのを見かけ、気になっていたので夫婦で申し込んだ」という。別の女性は「いつもと違う景色から観光できた。暑い中でも快適だった」と満足げだった。

ZMPの担当者は「ロボットが街中を走るのは世界的に珍しい。今後、海外の観光客にも乗ってもらいたい」と力を込める。26―28日にも2度目の開催を計画する。

ZMPはこのほど、ラクロを使って都内を巡るサービス「ロボット・トーキョー・ツーリズム」を公表。今後も同様のイベントを他地域でも定期的に開催する。ラクロを観光の目玉として活用する事業者を増やす考え。

ラクロは22年4月に成立した改正道交法で定義が明確化された。ZMPではこれまで搭乗者が単独で乗車して事故が発生した際、搭乗者に事故の責任が及ばないよう保安要員を配置していた。

新制度では、事故の責任が遠隔監視者に移管するため、保安要員の配置が必要なくなる見通しだ。経済産業省商務情報政策局商務サービスグループの担当者は「事業者が導入するにはまだ価格などが課題となるので国としても支援していく」と話す。新たな移動手段は観光の新機軸を打ち出せるか。事業者には安全性の担保と魅力的なサービス創出の両立が求められそうだ。

日刊工業新聞 2022年8月24日

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