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名大発スタートアップが実用化、CO2を地中に固定できる苗の正体

名大発スタートアップが実用化、CO2を地中に固定できる苗の正体

地中に炭素を固定する苗「宙苗」(手前)と育てたピーマン(奥)

TOWING(トーイング、名古屋市南区、西田宏平社長)は、二酸化炭素(CO2)を地中に固定できる苗を実用化した。数百個のピーマンを収穫できる苗一つで、少なくとも約150グラムのCO2を地中に固定する。今秋をめどに3億―5億円の資金を調達し、農家向けの販売体制を整備する。収穫した作物は同社がブランド化し、脱炭素化に寄与する野菜として飲食店や企業の社員食堂向けに販売する。

CO2固定苗「宙苗(そらなえ)」は、CO2を地中固定し土壌の質を改善するとして、農林水産省が推奨するバイオ炭を使う。もみ殻など植物性廃棄物を酸素の少ない状態で蒸し焼きにして炭化させた。土壌の1割に混ぜて使うのが一般的だが、トーイングは土壌のほぼ全てをバイオ炭にできる。CO2固定量は飛躍的に伸び、100平方メートルの農地で6―10トン程度固定する。

トーイングが強みとする人工土壌「高機能ソイル」をバイオ炭でつくることで実現した。多孔体に微生物を付加し、有機肥料を混ぜ合わせた。CO2は分解されにくく、100年近くも7割が地中に残るという。

まずはピーマンとトマト、キャベツの苗を販売する計画。宙苗で収穫した野菜は「宙(そら)ベジ」としてブランド化し、高付加価値な野菜として売る。良品計画のレストランや企業の社員食堂などで採用・引き合いがあるとしている。

トーイングは高機能ソイルを使った有機栽培システムを開発する名古屋大学発スタートアップ。今秋の資金調達により、試作品などで需要を検証する段階から、事業を本格展開する「シリーズA」に進むとみられる。

日刊工業新聞2022年8月5日

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