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倒産件数、足元で増加の兆し。政権の企業支援策を注視

文=帝国データバンク情報部 6年連続減少も予断を許さない状況続く
 2015年の倒産件数は8517件と、6年連続で前年比減少となるとともに、2年連続の1万件割れとなり、全業種および全地域で前年を下回った。四半期ベースでは、第3四半期まで一貫して減少基調で推移していたものの、第4四半期は13年第2四半期以来、10四半期ぶりの前年同期比増加に転じるなど、企業倒産は足元で底打ちの兆しも見られた。

 負債総額は2兆108億800万円と前年を7・7%上回り、3年ぶりの前年比増。負債トップは、海運関連のラムスコーポレーション(12月、会社更生法)の1400億円で、MARU(旧AIJ投資顧問、12月、破産)の1313億円、第一中央汽船(9月、民事再生法)の1196億800万円がこれに続いた。

 業種別では、建設業、運輸・通信業、不動産業が減少率2ケタとなり、特に民需を中心に建設投資拡大の追い風を受けた建設業は7年連続で前年を下回った。他方、小売業の構成比が21・2%(06年は17・2%)、サービス業は20・6%(同16・7%)と2年連続で全体の2割を超えており、消費回復の遅れが倒産動向にも表れつつある。

 個別の倒産事例を見ると、不祥事やトラブルが倒産の引き金となったケースが目立った。診療報酬債権運用のオプティファクター(11月、破産)や、企業年金運用受託の旧AIJ投資顧問など、不透明な資産運用を巡って証券取引等監視委員会の調査や摘発を受けた企業の大型倒産が続いた。

 肥料の成分表示偽装を長年続けていた太平物産(11月、民事再生法)や、学校給食での異物混入で地方自治体から契約を解除された徳島屋(12月、民事再生法)なども倒産に追い込まれた。不祥事やトラブルは取引先や消費者離れに直結し、規模を問わず市場から退出を余儀なくされる時代であることが鮮明だ。

 今後については安倍晋三政権が、夏の参院選や17年春に予定されている消費税率10%への引き上げを前に、法人税減税や設備投資への優遇措置を取り入れている。このため”ゾンビ企業“の処理を加速させるような金融政策の見直しを行うとは考えづらい。だが、国内外の各種リスクが複合的に影響し、倒産が増加傾向に転じる可能性は否定できない。予断を許さない状況が続く。

※日刊工業新聞では毎週火曜日に「倒産学」連載中
日刊工業新聞2016年1月19日4面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
地銀の再編統合が一段落したら、債務者区分の見直しが始まり地方の比較的大きな地場企業の経営危機がかなり表面化してくるのではないか。

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