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「気候変動 報道強化を」メディアに働きかける若年世代に存在感

「気候変動 報道強化を」メディアに働きかける若年世代に存在感

気候変動報道の強化を求めてテレビ局前で活動するメンバー

メディアに気候変動関連の報道強化を働きかける団体「Media is Hope(メディアイズホープ)」が注目を集めている。企業や視聴者の声をメディアに届ける活動が共感され、6月末には活動資金の調達に成功し、一般社団法人になった。環境問題は行政や有識者、業界団体が議論してきたが、メディアイズホープのように所属が異なる社会人や学生が集まった団体の存在感が高まっている。

7月3―9日、全体574件、主要テレビ局17件。

7月10―16日、全体549件、主要テレビ局39件。

新聞やテレビ、ウェブでの気候変動関連の報道件数だ。メディアイズホープのメンバーが集計し、会員制交流サイト(SNS)に投稿している。ほかにも視聴者が見たい番組を募集し、啓発するCM制作も予定する。インターネットで資金を募るクラウドファンディングで活動費を調達し、6月末までに430人から約400万円を集めた。

メディアイズホープの活動について会見(手前は共同代表の西田氏)

メディアイズホープのメンバー38人の所属はバラバラだ。共同代表の名取由佳さん(32)は福祉関係、同じく共同代表の西田吉蔵さん(38)は広告代理店に勤める。ほかにも写真家やシステムエンジニア、学生も参加する。

行政や企業に働きかける環境団体が多い中で、なぜメディアなのか。名取氏は「普通に生活している時、気候危機を知った。多くの人と共有するには報道の強化が必要と感じた」と動機を語る。温暖化が招いた豪雨による災害が多発し、「気候危機」が叫ばれるようになった。放置すると将来の人類に深刻な影響を与えると科学者が警鐘を鳴らすが、危機を知っている国民は少ない。

「気候変動の認知度は高いが、行動につながっていない」(西田氏)という課題もある。名取氏らはメディアには危機を伝え、国民の行動を変える力があると考え、2020年にメディアイズホープを結成。メディアには報道だけでなく、行動変容を促すプロジェクトを立ち上げて発信することも望む。

広告協賛するスポンサー企業にも期待する。「企業はお金を出すだけの姿勢だったが、ジャーナリズムを支える立場でもある」(同)と力説する。企業から報道機関に言いにくければメディアイズホープが間に入り、気候変動関連の報道を望んでいる声を届ける。

テレビ局前で報道強化を呼びかけたこともある。反応は好意的で「気候変動報道を増やしたい人がメディアにも、企業にもいると分かった」(名取氏)と手応えを語る。インターネットを使って誰でも情報を発信できる。それでもテレビや新聞といったオールドメディアに期待するのは「情報過多の今だから、オールドメディアに社会をけん引する役割がある」(同)と明快に語る。メディアと協力し、スポンサーや視聴者との新しい関係構築を目指す。

メディアイズホープ以外にも気候変動に危機感を持った学生や若者がグループを結成し、政府に要望を出すようになった。企業も環境対策について有識者や業界団体だけでなく、若い世代の声にも耳を傾ける時代になった。

日刊工業新聞社、「1.5℃の約束」キャンペーン参加 気候変動対策呼びかけ

日刊工業新聞社は国連広報センターが始めたキャンペーン「1・5℃の約束 いますぐ動こう、気温上昇を止めるために。」に参加した。国連や他のメディアとともに報道を通じて気候変動対策への行動を呼びかける。

キャンペーンには国連と報道機関の協定である「SDGメディア・コンパクト」に加盟する日本の121社が参加する。9月中旬から11月中旬まで各社は気候変動問題に関連した情報発信を強化する。

猛暑や豪雨などの自然災害が強大化し、事業活動に影響が出ている。産業革命前からの平均気温の上昇を1・5度Cに抑えて被害を軽減しようと、産業界は温室効果ガス排出実質ゼロに向けて動きだした。キャンペーンに参加して産業界の取り組みを支援する。

日刊工業新聞社は国連が2018年9月に結成したSDGメディア・コンパクトの創設メンバー。

日刊工業新聞2022年7月29日
松木喬
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
メディアに期待する声を聞いて素直にうれしかったです。それと同時に気候変動問題を報道するなら、自分たちも環境対策をする必要があると感じました。他社に気候変動対策を呼びかけておきながら、報道機関はしなくていい理由はありません。日刊工業新聞社もがんばりたいです。

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