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タイヤ生産に逆風、相次ぐ値上げと自動車減産で消費冷え込み

タイヤ生産に逆風、相次ぐ値上げと自動車減産で消費冷え込み

タイヤメーカー各社は原油高騰を反映し、国内市販用タイヤの再値上げを決めた(販売店=イメージ)

タイヤの生産や販売に逆風が吹いている。原油高騰を理由に、メーカー各社は相次いで国内市販用タイヤの値上げを決めた。半導体不足などによる完成車メーカーの減産も響いている。こうした状況を鑑み、日本自動車タイヤ協会(JATMA)は2022年のタイヤの国内需要予測を下方修正した。苦しい状況が続く中、新型コロナウイルス感染拡大前の水準に回復するには時間がかかりそうだ。(江上佑美子)

ブリヂストン、住友ゴム工業は9月1日、横浜ゴム、日本ミシュランタイヤ(東京都新宿区)は10月1日に国内市販用タイヤの価格を最大8%引き上げる。各社とも値上げに踏み切るのは今年2度目だ。トーヨータイヤも23年1月1日に、1年ぶりの価格改定を実施する。値上げ幅は最大10%の予定だ。

ただ、値上げの理由はやや変化している。メーカーからは「前回は天然ゴムやカーボンブラックなど、原材料費上昇の影響が大きかった。今回はエネルギー費のコスト増を反映した」(日本ミシュランタイヤ)、「今回は原油高騰が続いている影響が大きい」(横浜ゴム)といった声が上がる。

実際、天然ゴム価格は依然高水準ながら下落傾向にある。22年4―6月の天然ゴム(TSR20)の平均価格は1キログラム当たり1・65ドルで、同1―3月と比べ6・8%下がった。一方でニューヨーク原油(WTI)の平均価格は1バレル当たり108・7ドルと、同15・0%上昇した。

これに加えて足かせとなっているのが、新車生産の回復が遅れている点だ。JATMAは22年の4輪車用タイヤの国内需要見通しを、21年12月見通し比5・3%減(21年実績比1・1%増)となる1億385万本に引き下げた。

4輪車用タイヤのうち、新車用タイヤの年間見通しは同12・7%減(同2・6%増)の3611万本に下方修正した。部品不足などが長期化しており、完成車メーカーが稼働調整を続けているためだ。

市販用タイヤの需要も同0・8%減(同0・3%増、メーカー出荷ベース)の6774万本と予想する。「上期は降雪などで需要が伸びたが、下期の想定は景気見通しや物流コスト増を織り込み、抑え気味にした」(JATMA)。

GfKジャパン(東京都中野区)が全国のドライバーを対象にした調査によると、22年上期にメーカーが実施した市販用タイヤ値上げに対応し、36%が「タイヤの溝がなくなる(スリップサインが出る)まで今のタイヤを使い続けたい」と回答している。タイヤだけでなくさまざまな製品が値上がりする中、消費マインドも冷え込んでいる。

各社は高付加価値製品の投入で差別化や利益率向上を図ったり、コスト削減を進めたりといった対策を講じているが、厳しい外部環境に翻弄(ほんろう)される状況は当分続きそうだ。

日刊工業新聞2022年7月27日

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