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どうなる?2016年の保険業界―国内外で進む二つの動き

代理店への規制が厳格化、資本規制「ソルベンシー2」とは
どうなる?2016年の保険業界―国内外で進む二つの動き

保険ショップでは改正保険業法に対応した動きが進む

 2016年に保険業界では国内外で二つの動きが進む。国内では5月に改正保険業法が施行され、主に保険会社から保険商品の販売を委託された代理店への規制が厳格化される。海外では欧州で新たな資本規制「ソルベンシー2」が1月から始まった。二つの規制は国内代理店の再編や国際的な保険会社のM&A(合併・買収)を加速させる可能性もある。

代理店への3つの義務


 国内の改正保険業法施行により、代理店は顧客に保険商品を比較推奨できるよう十分な情報を提示する「情報提供」を筆頭に「意向把握」「体制整備」の三つが義務づけられる。契約者に対する説明責任が一層厳格化され、場合によっては金融庁による立ち入り検査も導入される。
 
 保険ショップと呼ばれる乗り合い型代理店業では、対応に向けた動きをすでに進めている。最大手のほけんの窓口グループは給与体系を従来の100%業績連動型から改め、40%をマネジメント力など組織力が反映される制度に改めた。
 
 さらに「3プラス1」と呼ばれる活動も実施。3回の面談で契約した後、実際に手元に保険証券が届いた段階で、もう一度顧客に来店してもらい、顧客の意向を再確認する徹底ぶりだ。
 
 ただ、こうした改革ができるのは資本力のある大手が中心。このため、資本力のない中小の代理店会社を中心に整理が進む可能性が指摘されている。
 

欧州保険会社では身売りも?


 一方、欧州で始まった資本規制「ソルベンシー2」は資産と負債を経済価値ベース(時価)で評価することを前提とした新たな資本規制だ。欧州保険会社は事業で抱える多くのリスクに耐えられるだけの、必要な自己資本を経済価値ベースで確保する必要がある。
 
 今回の規制が直接、日本の大手保険会社に影響が出る可能性は少ない。ただ、従来以上に厳格な資本規制のため、「すでにピークは過ぎた感はある」(金融機関幹部)とされているものの、資本蓄積が十分でない欧州保険会社が今後、身売りに出る可能性がある。
 

グローバル進出の礎に


 昨年、日本の保険会社は米国で相次いで大型買収を進めた。グローバル展開を急速に進めている中で、中長期的に欧州の保険会社を買収し、欧州市場進出の礎を築くきっかけになるかもしれない。
 
 また、日本でも経済価値ベースの資本規制の導入に関する議論が進んでいる。金融庁はすでに複数回にわたるフィールドテストを日本の保険会社に対し実施済み。
 
 ただ、日本の保険会社にとって、複雑とされる保険負債の経済価値ベースの評価手法や、リスク量の計算モデルの点など課題も多く、本格的な導入には賛否両論がある。
 
 欧州で先行して導入されたことで、経済価値ベースの資本規制そのものの長所と短所がより浮き彫りになってくる。今後、日本の保険業界の規制のあり方に向け、金融庁と日系保険会社にとって実務上参考になる事例が増えるとみられる。
(文=杉浦武士)
日刊工業新聞2016年1月13日金融面
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
2015年の保険業界は、各社、好業績を背景に財務余力も手伝い、「10年に1度」ともいわれるほど買収が相次ぎましたが、今年も目を離すことができなさそうです。

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