「予断」を持つようになった日銀に感じる危うさ
日銀は20、21日に開いた金融政策決定会合で大規模金融緩和の維持を決めた。インフレ抑制に向け金融引き締めに動く欧米との金利差拡大で円安が続いているが、景気腰折れへの懸念から金融緩和を維持した格好だ。一方、同日発表した「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で2022年度の消費者物価指数見通し(除く生鮮食品)を4月予想比0・4ポイント増の2・3%に引き上げた。物価高を吸収できる賃金上昇が国内経済の好循環を生み出すカギとなる。
ウクライナ情勢や円安を起因としたエネルギー、食料品などの価格上昇が続いている。今回の物価指数見通しの上方修正で日銀が定める2%の物価安定目標に届くことになるが、黒田東彦総裁は「賃金が上昇しているが、現状の2%の消費者物価上昇に追いついてない。もう一段の賃上げが必要だ」と指摘。「そのためにも金融緩和を続けて経済を支える」とした。
金融緩和が円安を招いているという指摘には「金利を上げれば企業の設備投資に大きな影響を与える。物価の安定が目標であり、為替をターゲットにしている訳ではない」と回答した。現在はドルの独歩高で、ユーロやポンドも対ドルで下落しているとし、「金利を引き上げた韓国でもウォンが対ドルで下落している。金利を少し上げたからといって円安が止まるとは考えられない」と説明。金利だけで円安を止めるとするなら大幅な金利引き上げが必要で、経済に大きな損害を与えるとの見方を示した。
日刊工業新聞2022年7月22日