「中国製EV」日本へ、物流業界で調達の動きが広がる背景
ゼロは中国で製造した電気自動車(EV)を現地の工場から日本まで輸送するサービスを始める。日中の陸送、海上輸送、車両の完成検査など輸送に伴う業務を一貫して請け負う。脱炭素の流れを受け、物流業界では価格競争力に優れる中国製の商用EVを調達する動きが広がる。ただ、新興EVメーカーが多く、日本への輸送基盤は未整備という。ゼロはこれまで培った輸入や輸送のインフラを生かし、新たな物流需要に対応する。
ゼロは中国で完成車の陸送を手がける陸友物流(北京市)を子会社化。協力会社とも連携し、車両の組立工場から港まで運ぶ輸送網を中国で確立した。
海上輸送ではグループ会社を通じて外航船の手配、輸出入の通関、荷役を手がけ、日本ではゼロの既存のインフラを生かして車両の出荷前点検(PDI)を実施。日本の道路運送車両法に基づく完成検査のほか、車両の登録や届け出、全国への輸送、納車までの物流業務を一貫して手がける体制を構築する。
物流業界では中国製EVを調達する動きが加速する。佐川急便はベンチャー企業のASF(東京都港区)と軽自動車クラスの商用EVを共同開発。生産を中国の広西汽車集団に委託し、配送用の軽7200台を9月から順次切り替える。ゼロの株式20%超を保有するSBSホールディングス(HD)も、新興のフォロフライ(京都市左京区)が設計して中国の東風汽車集団が製造するバン型のEVトラックなどを、約1万台導入する方針だ。
日本の完成車メーカーも商用EVを手がけるが、中国製と比べ価格競争力や開発スピードに大きな開きがあるとされる。こうした差を埋めようと日本の新興企業や中国の車メーカーが、日本の輸送環境に応じた商用EVを開発し、中国で生産して日本に輸出する動きが続く可能性もある。ゼロは欧米メーカーの輸入車業務で培った輸送基盤などを生かし、中国と日本をまたぐ輸送インフラをいち早く構築して、物流需要を取り込む。