衛星画像で農地状況を把握。スタートアップが見据える行く末
サグリ(兵庫県丹波市)は人工知能(AI)と衛星画像を使い、農地の状況を把握するサービスを手がける。耕作放棄地や作付調査の効率化を目指す。坪井俊輔社長は今年度は「自治体向けサービスで独占的なポジションを築いていく」と語る。現状と今後の事業展開を聞いた。
-行政向けに農地調査を効率化するサービスを手がけています。
耕作放棄地を把握する「アクタバ」と、2022年6月から作付調査を効率化する「デタバ」の提供を始めた。本年から農地調査に衛星画像を使えるようになったことは追い風だ。自治体からの資料請求も増えてきた。
デタバは現状、30種類の作物を80%の確率で把握できる。今年度までに50市町村での利用まで拡大し、把握できる作物の種類や性能を高めていく。今年度中には把握できる作物を50種類まで増やしたい。
-以前から海外への事業展開も行っています。その現状は。
今は行政向けのサービスの拡販に注力する。市況が悪くなる中で大型の資金調達を行い、新規事業にリソースを振り分けるべきではないと考えている。
昨年度までに売り上げが1億円を超え、黒字化した。今年度は利益が1億円を超えるようにもっていく。安定的に資金を確保できる状況を作り、自己資金で新規事業に投資できるようにしていく。
-新規事業の方向性は。
衛星画像から土壌分析を行えるサービスだ。現在は分析の推定精度を高めている。
国内向けには分析によって、農薬の使用量を適正化できることを訴求していく。現在のように農薬価格が高騰している中で、使用量を適正化し、減らせれば収益性を改善できることになる。従来の専門機関による分析よりも価格を落とす。また現在は、土壌分析ができていない土地も多い。そういった課題も同時に解消していく。早ければ8月中にもサービスを始める予定だ。
国外では与信情報に活用する。土壌の情報などから作物の収穫量を予測して、現地の金融機関に提供する。これを使い、通常よりも金利を抑えられる。金利の一部を我々が受け取る。以前からインドやタイでマイクロファイナンスを手がけてきたが、コロナ禍の混乱で中止せざるを得なかった。自己資金で再度チャレンジできる環境を作っていく。
-将来的にはどういった構想を持っていますか。
最終的には「脱炭素」の用途で活用する構想を持っている。農薬の使用量を減らすことは、化学肥料を作る際に使用される炭素排出量を抑制できる。また、農地に炭素を固定化することで脱炭素に寄与できる。こうした農地の動きをサービスで把握する。
この情報を、非政府組織(NGO)などが中心になって進める「ボランタリークレジット」という温室効果ガスの排出削減量や吸収量を認定する制度で使う。クレジットは温室効果ガスを排出する企業などが、購入することで自社の排出量を実質減らすために使う。購入資金は農地の人々へ還元する。農地の脱炭素化をクレジットにすれば、現地の人々が我々のサービスを利用するインセンティブになると考えている。
インドでは農業生産者企業(FPC)という民間の農協のような企業と協力して、サービスを普及させていく計画だ。利用者はクレジットによる金銭的なメリット、FPCには農地の状況を把握できることで効率的な営農指導行えるようになる。