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理解度に合った問題を出題。AIを使ったスゴい教材

COMPASS(コンパス、東京都文京区、小川正幹社長)は学生の理解度に合った問題を出題する人工知能(AI)型教材「Qubena(キュビナ)」を提供している。学生個人の学習中の操作ログや計算過程、回答データを分析することでつまずく原因を特定し、関連問題を自動的に提示する。オンライン授業が定着した昨今、地域行政の学力向上事業の一環として導入されており、さらなる精度向上と利用者の増加を目指す。

同社は創業時は学習塾で、生徒に合わせてプリントの問題集を作成していた。しかし講師が問題を出すだけでは生徒の学習のつまずきに対するカバーが追いつかなかった。そこでAIの活用にかじを切り、2016年に製品化した。塾内での使用に始まり、私立校、公立校と導入先を拡大していった。

キュビナはタブレット端末への手書きの文字入力の正誤を判定するほか、アニメーションでの解説も行う。リリース当初は算数と数学のみだったが、21年に国語・英語・理科・社会の4教科を追加した。生徒が学習した内容を忘れる時期をAIによって計算し、復習タイミングを最適化できる。他社の類似のサービスは単元ごとに復習するケースが多いが、キュビナでは生徒がピンポイントで復習できるように間違えた問題に関連した問題を提示する。

キュビナを導入することで、学校の授業の変革が期待できる。COMPASSが麹町中学校(東京都千代田区)でキュビナを取り入れた実証試験を行った際、学期内で必要となる授業時間を約半分にすることができた。同社の佐藤潤副社長は「空いた時間を芸術や数学などを総合的に学ぶ『STEAM教育』や、次の単元の先取り学習に使うことができる」と話す。生徒の学習状況をリアルタイムで把握できるので、先生の業務の負担軽減にもつながる。

新型コロナウイルス感染症の拡大でオンライン授業やデジタル学習が急速に普及し、リリース当初は600人ほどだったキュビナの利用者は21年8月に50万人を超えた。「ユーザーが増えるほど、問題の正答率や適切な復習内容などのデータが蓄積できる」と佐藤副社長。利用者が急増した一方で、いかに先生たちにキュビナを活用してもらえるかが重要になるという。

キュビナは今後小中学生に焦点を当て、対応する5教科の問題精度を上げていくほか、22年度中にさらに20万―30万人の新規利用者の獲得を目指す。(伊藤快)

日刊工業新聞2022年5月27日

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