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《加藤百合子の農業ロボット元年#05》なぜ法人経営体が増えているのか

生産性向上ツールと規格化が大規模農業を促す
 農林業の統計調査、農林業センサスの結果が昨年11月末に公表された。前回調査の5年前より総農家数で37万5000件減少、主業農家でも6万7000件減少した。ただし、専業兼業という分類でみると専業農家数は増加に転じ、農家の栽培面積も増加傾向にあり、専業家・大規模化していることがわかる。

 現場でも力のある農家や生産法人に農地が集まる傾向にあるが、他産業以上に人材不足の状況にあり、機械やITを活用して解消しようという方向性にある。しかし、ツールはそれを導入する側の生産体系や体制から検討しなければ、人手不足解消も生産性向上も成しえない。

 既にベンチャーから大企業まで、農業ICT関連には多くのシステムがあり、農業ロボットもこれからいろいろなタイプがでてくるに違いない。しかし、個人や地域により生産体系が多様過ぎるため、基幹となる用語や管理手法の統一が遅々として進まないのが現状である。その点において、既存農家が法人化することに加え、企業参入を促進することが一つの大きな向かうべき方向だと考えている。

新規参入、失敗から学ぶ


 私が農業事業を開始した6年程前と最近では、農業に関心を持ち、相談に来られる農業外企業の方々の考え方がまるで異なる。6年程前は農業参入した企業はその後撤退が相次ぎ、企業には貸さないという不文律ができている地域も少なくない。

 しかし、最近、農業参入する企業はその失敗を研究し、農業が長期的な事業であり、生産の難しさから既存生産者との役割分担を理解し、現地生産者と連携する方法を採っている。先日来社された岡谷鋼機は、創業が1669年。農業参入をしたばかりだが、今後100年、200年後の事業として農業を捉えているという。

 センサスにおいても多くの数字が減少傾向にあるのに対し、法人化している農業経営体数は5000件増と順調に数を増やしている。企業参入や小さい農家が集まり集落営農組織を創設した結果だが、超高齢化をいち早く迎えている農業はその体制が大きく変わってきている現れ。

 この方向で、これまでの多数の個人事業から、地域や品目、生産体系等である程度が経営組織化されていけば、ロボットを含む機械やITの導入効果が得られやすくなる。

 TPP妥結もあり、今後の大規模農業は、生産性向上のための”道具“を使いこなす経営体制と生産体系を、いかに規格化できるかにかかっている。
日刊工業新聞2016年1月13日 ロボット面
加藤百合子
加藤百合子 Kato Yuriko エムスクエア・ラボ 代表
ITもロボットも農業にとってはあくまでもツール。そのツールをどう農業界が使いこなし、結果として生産性が上がり、しっかり納税できるようになることが”強い農業”なんだと思います

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