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太陽電池市場を牽引する“第三世代”、ペロブスカイト太陽電池とは?

燃料価格の高騰、ウクライナ危機、高まるSDGsへの意識などから、環境発電のニーズが一段と高まりをみせている。
 富士経済(東京都中央区)がまとめた新型・次世代太陽電池の世界市場と開発動向の調査によると、2035年の世界市場は、21年比22・6倍の8300億円となる見通し。既存の太陽電池との併用や代替によるペロブスカイト太陽電池(PSC)が伸長し、大幅に拡大すると予測される。

ペロブスカイト太陽電池は灰チタン石(ペロブスカイト)と同じ結晶構造を持つ有機・無機混合材料でできた太陽電池のこと。桐蔭横浜大学の宮坂力特任教授が09年にペロブスカイト結晶の薄膜を発電部に使用し、太陽電池として動作することを発見した。ガラスなど基板上に電極・半導体・ペロブスカイト層などを塗工して積層し、印刷技術を使って製作するため従来の太陽電池よりもコストを抑えられる。

現在普及しているシリコン製の太陽電池は、家庭用発電設備や人工衛星などさまざまな分野で利用されている。だがエネルギー変換効率が20%で、太陽光が当たっている時しか発電できないという課題がある。一方でペロブスカイト太陽電池は曇りの日や蛍光灯などの弱い光でも発電でき、薄くて軽く曲面に設置できる。エネルギー変換効率は実験レベルで25%以上を達成している。
 実用化に向けての課題は多い。有機物を使うため耐熱性に難点がある。また水や空気にさらされると結晶が劣化しやすい。材料設計や緻密な膜塗工技術などが電池の性能を大きく左右するため、量産化に向けた研究開発が各所で進んでいる。

ペロブスカイト太陽電池を含む太陽電池の種類について、「今日からモノ知りシリーズ トコトンやさしい環境発電の本」(日刊工業新聞社)より抜粋し、以下に紹介する。

太陽電池はいろいろ?

シリコン系、化合物系、有機系

太陽電池にはいろいろな種類があります。分類には、材質(シリコン型と非シリコン型)、厚み(通常の結晶型、薄膜型)、接合数(単接合型、高効率多接合型)、動作原理(pn接合型、色素増感型、量子ドット型など)での分類が可能です。
 通常の太陽電池に用いられるシリコンは地中には二酸化ケイ素の形で多量に存在しますが、太陽電池ではシックス・ナイン以上(99・9999%以上)の高純度のシリコンが必要で、高価で希少材料です。

太陽電池は、材料面からは上図のように分類できます。結晶シリコン系として、単結晶型と多結晶型があります。多結晶型はモジュール変換効率が低いものの製造価格を低くできるので、現在までの主流となっています。微結晶シリコンや非結晶体のアモルファス(非晶質)シリコンでは薄膜化され、シースルー型の大面積太陽電池の製造が可能となります。
 シリコンを用いず、いくつかの元素を混ぜ合わせて同じような半導体を作ることが可能であり、化合物系太陽電池と呼ばれています。モジュール変換効率は結晶シリコンの場合の半分ほどですが、シリコンに比べて放射線に対して影響が少ないので、人工衛星などに用いられてきました。
 その他、有機系として、光合成の仕組みを利用した色素と電解質を用いた色素増感型や、有機半導体型があり、柔らかくてカラフルで安価な太陽電池として商品化されています。理論効率の高い量子ドット太陽電池の開発も進められています。

太陽電池は、これまで第1世代としての高効率の結晶シリコンが使われてきましたが、高価な高純度シリコンの使用量を抑えた薄膜シリコンや化合物系としての第2世代太陽電池も普及してきています(下図)。今後、第3世代の有機系や量子ドット系の太陽電池の開発が進み、高効率化と低価格化が進み、市場シェアが増大すると予想されています。

POINT
●アモルファスなどの薄膜シリコンで低価格化
●化合物系で耐放射線性能の向上
●有機系で柔らかくてカラフルで安価に

(「今日からモノ知りシリーズ トコトンやさしい環境発電の本」p.80-81より抜粋)

<書籍紹介>
書名:今日からモノ知りシリーズ トコトンやさしい環境発電の本
著者名:山﨑耕造
判型:A5判
総頁数:160頁
発行月:2021年11月
税込み価格:1,650円

<販売サイト>
Amazon
Rakuten ブックス
日刊工業新聞ブックストア

<目次(一部抜粋)>
第1章 環境発電とは?
第2章 環境発電のしくみは?
第3章 運動の環境発電とは?
第4章 温度差の環境発電とは?
第5章 光の環境発電とは?
第6章 電波の環境発電とは?
第7章 バイオの環境発電とは?
第8章 環境発電のための蓄電と無線通信は?
第9章 さまざまな環境発電の応用は?
第10章 環境発電の未来は?

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