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「ノートEV」は日産を変えるか

追浜工場の稼働率、HV対抗、小型車テコ入れー3つの課題克服へ
「ノートEV」は日産を変えるか

追浜工場

 日産自動車が今秋にも主力小型車「ノート」に電気自動車(EV)仕様を追加する。ノートEVの投入からは、日産の三つの転換点が読み取れる。追浜工場(神奈川県横須賀市)の稼働率向上、基幹部品である電池調達の最適化、国内の小型車販売の建て直しだ。

 ノートEVはガソリン車と合わせ追浜工場で作る。国内最量販クラスのノートの生産は、追浜にとって待望の大口案件となる。

 日産は2012年までの超円高下に生産の海外シフトを進め、国内生産は低コスト体質を整えた九州工場(福岡県苅田町)にシフト。このあおりで追浜の生産が落ち込んだ。

 先代ノートも追浜で生産していたが、12年の全面改良時に九州に移管。同時に追浜は2本あるラインの1本を休止した。生産技術や人材を生み出す”マザー工場“としての役割を強めた一方で、稼働率は改善せず13年度の生産実績は能力の5割の12万台に終わった。14年度以降も低迷が続く。

 再びノートを追浜で生産するのは今春から九州で北米向けSUVを生産するため。九州はフル稼働が続き、ノートの移管で空いた能力をSUV増産に充て米国需要に対応する考えだ。ノートは月産1万台の計画。16年度内に7―8万台の生産が確保できる。国内事業の悩みの種だった追浜低稼働問題はひとまず改善の道筋が見えた。

 日産は量産EVの駆動用電池を初めて外部調達する。ノートEVの駆動用リチウムイオン電池にパナソニック製を選んだ。日産はEVの電池をコア技術と位置づけ、NECとの共同出資会社からの調達か内製にこだわっていた。

 だが競合電池メーカーの低コスト攻勢を受け「外部との競争の中で最適なものを採用する」(カルロスゴーン社長)と方針転換。その手始めが今回となる。商品競争力の向上につながる調達の最適化が、基幹部品で進んだ意義は大きい。

 ノートEV投入は日産の国内販売にとっても肝になりそう。「国内では確固たる2位が目標」(幹部)だが、ここ数年4―5位圏で落ち着いてしまっている。鬼門は小型車。国内の小型車市場はトヨタ自動車のHV「アクア」やホンダの「フィット」など競争が激しい。スズキも小型車を強化し始めた。1車種当たりの販売量も多く、小型車攻略が国内販売の明暗を分ける。

 エコカー戦略でEVに傾斜した日産はHVの車種展開が手薄になった。現行ノートは「スーパーチャージャー」という別の環境技術を採用して低燃費を打ち出した。ガソリン車の中ではヒットしたが、HVに競り負けている感は否めない。

 今回、「レンジエクステンダー付きEV」という新技術を武器に、仕切り直しで激戦区に挑む。新技術が新たな市場を生めば日産としては競争を優位に運べる可能性がある。ノートEVは国内販売の流れを変える起点となるかもしれない。
(文=池田勝敏)
日刊工業新聞2016年1月8日自動車面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
昨日、公開には「ノートEV」投入の背景説明。個人的には電池の外部調達に注目したい。日産が支配しているNECとの量産合弁会社。将来は外部との再編で日産の関与を下げるのではないか。電池事業を自社で抱えるうまみはなくなりつつある。エコカー戦略+自動運転で思い切った提携戦略がある可能性も。

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