世界シェアが後退する…危機感が駆り立てたNTT再編、海外事業をどう戦うか

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NTTグループの海外事業統合を発表する澤田NTT社長(左)と本間NTTデータ社長(9日の会見)

NTTグループの海外戦略が新ステージに入る。9日にNTTデータ傘下に新会社を設立して海外事業をグループで一本化する計画を公表。12日にはそのNTTデータが、海外事業を伸ばし2025年度に全社売上高を21年度比56・7%増の4兆円に引き上げる中期経営計画を発表し、世界のIT大手に対抗する姿勢を鮮明にした。今回の再編を契機にNTTグループのシナジーを最大化し、成熟する国内市場を含め成長を実現できるかが問われる。(狐塚真子、張谷京子)

【NTTデータ傘下に新会社】シナジー創出―25年度売上高4兆円

「環境問題など、企業が対応すべき課題が多様化・複雑化している。顧客ビジネスの深い理解と、人・企業・社会をつなぐ力を掛け合わせ、持続可能な社会を実現する。世界中の顧客から信頼される企業を目指す」―。NTTデータの本間洋社長は、25年度を最終年度とした新中計について説明した12日の会見でこう意気込んだ。

NTTは海外事業会社のNTTリミテッドをNTTデータの傘下に移管。NTTデータの海外事業とNTTリミテッドを統合して10月に新会社を設立する計画を決め、9日に公表した。

NTTグループの海外事業を大半を引き受けることなる“新生”NTTデータ。新中計では25年度に売上高を4兆円、営業利益率10%の達成を目指す。NTTリミテッドとの統合で売上高は単純合算で3兆5000億円規模になり、そこから14・3%増となる。

事業統合で、NTTデータの売上高のうち海外事業は約6割を占める規模になり、同事業が中計の目標達成のカギを握る。ただ海外では米IBMなどIT大手の壁が立ちはだかる。20年度時点でNTTデータの海外主要国におけるプレゼンスをみると、市場規模の大きい米国では29位にとどまる。

どう戦うか。本間社長は「(NTTデータとNTTリミテッド)の双方の技術力を合わせたトータルサービスの提供」を挙げる。NTTデータのコンサルティング・システム構築力に、NTTリミテッドのデータセンター、ネットワーク、マネージド(運用)サービスを融合する。

例えば製造業ではあらゆる工場をつなぎ、経営の効率化や、データを用いた故障の事前検知が可能なサービスの提供を可能にする。スマートシティー(次世代環境都市)分野など、企業・業界の枠を超えた社会基盤の構築にも取り組む。新たな価値提供で「今まで取れていなかった案件や、新規顧客の獲得を目指す」(本間社長)とする。

【世界のIT大手に対抗】先行投資・M&Aなど積極化

サービスの高度化に資する先行投資やM&A(合併・買収)などで戦略の一体性も生まれる。具体的な金額は明示しなかったが「クラウドやセキュリティーなどの注力技術に対して一定の投資枠を確保」(同)する。加えて北米など主要市場でのシェア拡大に向けたM&Aも積極化する方針だ。

このほかコーポレート機能の統合によるコスト削減や、デジタル人材不足の解消も期待される。統合による効果は「25年に300億程度」(同)と見込む。

以前からNTTデータは「ITベンダーとして世界トップ5入り」を掲げてきたが、未達に終わっている。08年以降、海外事業の成長ドライバーの一つとして積極的にM&Aを実行してきたが、収益性向上の必要性が指摘されてきた。20年度時点で海外事業のEBITA(利払い・税引き・償却前利益)率は3%程度だった。

19年度以降、本格的な事業構造改革に乗り出した。北米では20年度に160億円を投じ、人的資源の最適化やオフィス・データセンターの統廃合を実行。欧州・中東・アフリカ・中南米(EMEAL)地域では19年度に140億円、20年度に40億円をかけ、人材のリスキルや低採算事業の見直しなどを行った。

こうした取り組みが功を奏し、21年度の海外事業における営業利益は、北米で172億円(前期は162億円の赤字)、EMEAL地域で156億円(同61億円の赤字)と、コロナ禍の影響を受けながらも伸長。EBITA率も6・5%まで高まった。

海外事業の成長を目指すには、NTTの協力が必要―。NTTデータはこうした認識を強くし、同社側から21年9月、正式にNTTへ海外事業統合を提案した。一方のNTT側にも海外事業の統合を実施しない場合、「(20年度時点でITサービスの世界シェア)6位の順位が、25年に10位くらいまで後退しかねない」(関係者)との危機感があった。

NTTデータの海外事業の収益性が改善し始めたタイミングに合わせてNTTリミテッドとの事業統合が実現する。上昇気流に乗り、成長を加速できるか。

【国内外で中核会社明確化】海外、成長伸びしろも検討必要

海外事業をNTTデータに集約する今回の再編は、NTT全体の経営の効率化にもつながる。国内はNTTドコモ、海外はNTTデータが中核事業会社を担うというすみ分けが明確になるからだ。澤田純NTT社長は「(海外事業は)NTTデータに寄せた方がわかりやすい。NTTデータが強くなってくれると、NTTグループ全体にとっても当然いい」と認識する。

NTTはこれまで、国内事業を中心にグループ再編を進めてきた。20年にドコモを完全子会社化。1月にはドコモが長距離固定通信のNTTコミュニケーションズ(NTTコム)らを子会社化した。国内では、政府の要請による携帯通信料金の引き下げなどの影響で、既存の通信事業の成長は頭打ち。NTTは、再編をテコにグループのシナジーを最大化する必要があった。ドコモの完全子会社化などで固定・移動通信を融合し、法人事業などの非通信事業を伸ばしていく方針だ。

一方、海外事業は成長の伸びしろが大きい。ただグループシナジー最大化に向けた取り組みは始まったばかり。NTTの次期社長に内定した島田明副社長は12日の会見で「(今回のNTTリミテッドとNTTデータの海外事業統合で合意した)法人向けのビジネスだけでなく、もっと幅の広い分野でグローバルビジネス展開を検討していく必要がある」と指摘する。

例えば、特定企業の機器に依存しない無線ネットワーク「O―RAN(オーラン)」。この技術は、基地局の整備において、工期短縮やコスト削減が見込める。NTTはNECや富士通などと組んで海外展開にも意欲を示す。ただ現状ではオーランを主導するのはドコモ。今後、海外展開を進める上では、NTTデータとの連携がカギになる。

澤田社長はグループ再編について「企業体を発展させるためのもの。再編に終わりはない」と明言。海外事業の加速に向け、さらなる再編に動く可能性は否定できない。

日刊工業新聞2022年5月13日

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