“呉越同舟”自動運行バス…NTT東日本とKDDIが挑む実証の全容
ライバル同士が自動運転の実現に向けて協業―。NTT東日本はKDDIなどと組み、成田国際空港内における遠隔監視型自動走行バスの実証実験を行った。成田空港にとっては、異なる通信事業者のサービスを組み合わせることで耐障害性が向上するといった利点が見込める。実証ではバスがルールに沿って走行できたなどの成果を得た。一方で将来、航空需要の回復に伴って旅客が増えた際に実用性を示せるかが問われる。(斎藤弘和)
航空需要回復後 多客時対応など課題
NTT東は第5世代通信(5G)をエリア限定で使うローカル5Gの環境構築を行い、KDDIは自社の通信網による5Gや4Gを提供。ティアフォー(名古屋市中村区)の自動運転車両や遠隔監視システムを活用して2月に実証を行った。車両の走行ルートは、成田空港の第2ターミナルから第3ターミナル間の片道約700メートルの区間。車線内での走行や速度制限の順守、死角にいる車両への対応などが問題なくできることを確認した。
NTT東のローカル5GとKDDIの通信網を使ったのは、通信冗長化のためだ。機器の故障など、不測の事態が発生した際も車両の走行は続ける必要がある。異なる通信会社のサービスを併用すれば、両方が一度に不具合をきたす可能性は低いと考えられる。実証では、ローカル5GからKDDIへの通信網への切り替えを90秒以内で行えたという。
NTTグループとKDDIグループは、個人向け事業でも法人向け事業でも激しく競合してきた。一方でNTT東は、バックホール(中継回線)の提供や光回線の卸販売などで他の通信会社を顧客とする立場でもある。NTT東の野間仁司ビジネス開発本部担当課長は「我々は(NTTドコモやKDDIといった)携帯通信4社と公平に付き合う。案件によって組んだり競合したりするのは当然だ」と冷静な姿勢を示す。
成田空港における自動運転の商用化時期は2025年度ごろを見込むが、今後解決すべき点は少なくない。成田空港の関係者を対象としたアンケートの結果では、自動走行バスの乗り心地を評価する声が多かった一方、急停車に対する懸念も出た。緊急時・保守時の駆けつけ体制なども課題に挙げられている。
さらに実証時はコロナ禍の影響で航空便や旅客が比較的少なかった。航空需要の回復をにらみ、車両の遠隔監視の枠組みを含めて実用的なものにする必要がある。NTT東の中野郷ビジネスイノベーション本部担当課長は「1人のオペレーターで複数の車両を監視していかないと、投資対効果が出てこないのは明らかだ」とみる。
また、成田国際空港の壇知史旅客ターミナル部マネージャーによると、コロナ前の19年度にはターミナル間の連絡バスを1カ月当たり約8000人が利用していた。「それに耐えうるくらいのものが(商用化の際には)必要」(壇氏)。一連の課題を着実に解決していけるか試される。