350年の歴史で収集した文化遺産を収蔵、三井記念美術館のシンボル
三井グループが本拠地として東京・日本橋に構え、関東大震災で被災した旧本館の建て替えから既に90年以上の歴史を持つ重要文化財の「三井本館」。この最上階にあるのが三井記念美術館だ。2005年の開館以来となる全面的な改修工事を終え、4月末にリニューアルオープンした。
三井家は江戸時代に元祖・三井高利が呉服店「越後屋」を開いたのが始まり。店先にて現金取引で定価販売する「現金掛け値なし」で繁盛し、江戸と京都、大坂で呉服店と両替店を開く。明治以降は三井銀行や三井物産、三井鉱山などを設立し、戦前、日本最大の財閥としてわが国の経済に大きな影響をもたらした。
その約350年におよぶ三井家のヒストリーの中で収集されてきた貴重な文化遺産が、三井記念美術館に収蔵されている。高利の子息らが分家した「三井十一家」のうち、4家から日本と東洋の美術品約4000点と切手コレクション約13万点が寄贈され、三井文庫別館(東京都中野区)を開館。その20年後に現在の日本橋に移転し、三井記念美術館となった。学芸部長の清水実氏は「三井家は江戸時代からの豪商。明治時代に財閥となったところとはひと味違うのでは」と語る。
国宝6点、重要文化財75点を誇る館蔵品の約半数を占めるのが、茶道具の名品たち。中でも国宝「志野茶碗 銘卯花墻」は日本で焼かれた二つしかない国宝茶碗の一つで、美濃の牟田洞窯で焼かれ、千利休の弟子の茶人・古田織部が好む個性的な“織部好み”に通じる作だ。三井家がパトロンとなった円山応挙の国宝「雪松図屏風」は同館のシンボルになっている。
京都に住んだ三井家は、茶の湯を通じて仁清や乾山につながる永樂家の陶磁器を好み、長年にわたる親交もあった。開催中の「絵のある陶磁器―仁清・乾山・永樂と東洋陶磁―」展では、こうした陶磁器の中の絵の世界を存分に楽しめる。
【メモ】▽開館時間=(現在)11―16時▽休館日=月曜日など▽入館料=展覧会により異なる▽最寄り駅=東京メトロ銀座線ほか「三越前駅」▽住所=東京都中央区日本橋室町2の1の1三井本館7階▽電話番号=03・5777・8600