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「勤勉な国・ニッポン」で残念な数字。生産性をどう上げていくか

主要先進7カ国で最下位。モノとサービスの融合がカギを握る
「勤勉な国・ニッポン」で残念な数字。生産性をどう上げていくか

倉元製作所(宮城県栗原市)は社会に役立つコトづくりを目指して開発した介護用センサーマット

 課題が山積する日本経済で、成長力を高める最大のポイントが生産性向上だ。生産性向上を企業の収益増、個人の所得増につなげ、経済の好循環を実現しなければならない。他の先進国に比べ劣後している生産性運動を推進し、2016年を「生産性革命」の出発点にしたい。

 人口減少・超高齢社会に直面する日本経済。政府が掲げる「国内総生産(GDP)600兆円」実現に向け、キーワードになるのが生産性向上だ。

 わが国の現状はどうか。世界の中の日本は低位にあると言わざるを得ない。日本生産性本部が昨年末にまとめた「日本の生産性の動向」によると、14年の日本の労働生産性(就業者1人当たり名目付加価値・暦年ベース)は768万円。OECD加盟34カ国中21位、主要先進7カ国では最下位となっている。日本生産性本部の茂木友三郎会長は「勤勉な日本としては残念な数字」と指摘する。

 問題なのはサービス産業の生産性の低さ。サービス産業大国・米国と比べると、5割程度の水準に甘んじている。国内総生産の約7割を占めるサービス産業の生産性を高めることが日本経済の成長には必要不可欠。裏を返せば低い生産性は、成長への余地が十分残されており、大きなチャンスと言うこともできる。

 改善に向けた方策は少なくない。そのひとつは、モノとサービスの融合だ。高い生産性を誇る製造業とサービスを組み合わせた”コトづくり“を推進したい。強いモノづくりをベースにサービスという視点を付加することは、新たな需要創出にもつながる。

 情報技術の積極活用も有効だ。モノのインターネット(IoT)や人工知能(AI)などの技術革新を積極的に活用し、サービス産業の高度化を実現したい。実際に一部のホテルでは先進ロボットが活躍する事例も出始めた。

 潜在成長率を高めるには、労働力減少を国内の資本蓄積の増加と生産性向上が補う必要がある。国内投資が低調の中、生産性向上が成長を主導する。今年は生産性革命の第一歩を踏み出したい。

ファシリテーター・永里善彦氏の見方


 経済成長を促す要因の一つに、労働人口の推移がある。高度成長期には生産性の低い第1次産業から生産性の高い第2次産業への大量の労働人口移動があった。しかし失われた20年では、グローバル化の波と円高のため、製造業はスリム化し、海外に工場を移転した。その結果、日本の労働人口は、製造業・建設業から、新たな雇用の受け皿としての福祉・介護事業へと移動したが、第3次産業は生産性が低い。少子高齢化時代では、労働人口の増大は期待できない。経済成長を促すためには生産性の高い事業を創生し、付加価値の高い新しいモノづくり業を起こす必要がある。
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日刊工業新聞2016年1月7日付「社説」より
永里善彦
永里善彦 Nagasato Yoshihiko
 例えばサービスを見据えたモノづくり、システムを組み込んだモノづくり、モノづくりとICTの融合、ソリューション・システムビジネスの創出、地域経済活性化のための6次産業の創生等々。換言すればイノベーションにより新市場を創生し、産業構造を転換して日本経済を成長軌道にのせることが重要である。

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