京大「研究用原子炉」停止へ…研究の灯を次世代にどうつなぐか
京都大学は2026年5月、研究用原子炉(KUR)の運用を終了する。米国による使用済み燃料の引き取り期限が迫ることが背景にある。KURは国内の大学による最大の研究用原子炉で、西日本における原子炉研究の一翼も担う。研究の灯を絶やすことなく次世代へどのようにバトンをつなぐのか。(大阪・石宮由紀子、福井支局長・佐々木信雄)
産業向け・人材育成に影響
KURは複合原子力科学研究所(大阪府熊取町)が保有する2基の研究炉の一つ。設備の老朽化に伴い計測機器の更新などを検討する時期に入っていたが燃料の処理の問題が大きく、停止の方向へと動いた。中島健複合原子力科学研究所長は、「原子炉に対する思いが大きく、(今回の決断は)辛い」と苦しい胸の内を明かした。
教育機関として京大と同様に、近畿大学も研究炉を保有する。同大原子力研究所の山西弘城(ひろくに)所長は、「実物の原子炉を目の当たりにしながら、放射線とはどういったものかを学ぶ場になっていた」とKURが果たしてきた役割を説明する。
東日本では日本原子力研究開発機構の大型の研究炉が運用中。「西日本で大型の研究炉があることに意義がある」(山西所長)とため息をもらす。またKURの停止による影響は、産業向け研究で大きいことを指摘。放射性(RI)医薬品などの誕生に大きく関与してきたためだ。人材育成の面では、「(KURの)研究者はあぶれて他の研究課題に行くしかないのでは」(同)との懸念も示す。
「もんじゅサイト」でカバー
KURの停止に伴う代替措置について、いくつか検討はなされている。京大のもう一方の研究炉の臨界集合体実験装置(KUCA)は炉心変更が容易なため、低濃縮ウランに切り替えて運転を続ける。KUCAの改良のほか、福井県のもんじゅサイトで建設計画中の新たな研究炉でカバーしようとしている。
福井県敦賀市での新しい研究炉は、文部科学省が概念設計を詰めている。22年度中に次の段階となる詳細設計に移る考えを示す。原子力規制庁との具体的折衝は詳細設計を作ってからになる見込みで、施設ができるのは早くても10年先と見られる。KURが停止してからの空白は避けられず、「その期間をできるだけ短縮することが必要」といった議論が関係者でされている。
近大の山西所長は、「技術の継承ができるか。その間のギャップを埋めるのは大変だろう。もんじゅサイトの施設が整うまでは、(近大の研究炉を)それのエントリーとして紹介していく」と話す。