再生エネ電気の利用、従業員家庭に推奨する企業の狙い
一人ひとりの環境意識向上
国連の持続可能な開発目標(SDGs)の実践として再生可能エネルギーを利用する企業が増えている。電力契約の切り替えで再生エネ由来電気をオフィスや工場で購入しやすくなったためだ。さらに進み、従業員に家庭での再生エネ電気の利用を呼びかける企業も登場している。従業員一人ひとりの環境意識を高めるだけでなく、営業での武器になりそうだ。
廃棄物処理業の浜田(大阪府高槻市、浜田篤介社長)も約130人の従業員に再生エネ電気の紹介を始めた。あくまで推奨だが、経営企画室の寺井正幸氏は「従業員に環境問題を“我がこと”と思ってほしい」と狙いを語る。
同社は2030年度までに温室効果ガス排出量を18年度比半減する目標を設定。本業でも太陽光パネルのリサイクル事業にいち早く参入した。そのリサイクルのエネルギーに二酸化炭素(CO2)を多く排出する火力発電の電気を使うことは「矛盾」と感じ、事業所で再生エネ電気の購入を始めた。「環境ソリューション企業と名乗っているからには、まずは自分たちから」(寺井氏)という思いからだ。
ただ、従業員にしてみると「会社がやっていること」と“他人ごと”になる懸念があった。そんな時、再生エネ電気を販売するUPDATER(東京都世田谷区)から従業員への再生エネ電気の提案を薦められた。1月20日、脱炭素や再生エネが必要となった背景を説明する社内勉強会を開催。別の会議の日程と合わせたので全役員が参加し、「社長が一番、質問していた」(同)という。
ちょうど、参加者が大企業から浜田の温暖化対策を聞かれていた。東京証券取引所のプライム市場上場企業は取引先も含めた排出量の開示が4月から求められるようになった。廃棄物処理を請け負う浜田も取引先に該当するため、大企業が質問したと考えられる。寺井氏は「漠然と『やっています』と答えて済ますよりも、自分たちの活動を積極的に説明できる」と勉強会の成果を強調する。営業担当者が取り組みを語ると相手にも印象に残り、取引で差別化につながりそうだ。
電気の利用はプライベートなことなので切り替えた従業員数は調査していないが、「会社の方針が現場にも伝わりやすくなった」と手応えを語る。
アミタホールディングス(HD)は18年から再生エネ電気の利用を従業員に薦めている。契約を変えると1世帯当たり月200円を支給する制度も用意した。パナソニックHDは工場向けに調達している再生エネ電気を従業員にも販売している。工場の電気が余りがちになる夜間、家庭で活用してもらおうと20年から始めた。
UPDATERが従業員に再生エネを提案する企業を募ったところ、2月上旬までに浜田やアミタHDのほかアシックスやスノーピーク、ZOZO、電巧社など計24社が賛同した。対象従業員は合計3万人となる。
CO2排出ゼロを目指すと宣言し、再生エネの普及を社会に訴える企業が少なくない。従業員にも再生エネを薦めると宣言にも説得力が増し、SDGsの具体的な活動としても訴求できる。