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【2016キーマン】コマツ・大橋徹二社長 「米国が強い需要を維持してくれれば」

中国の状況は良くなってきたが、春節商戦には正直期待していない
【2016キーマン】コマツ・大橋徹二社長 「米国が強い需要を維持してくれれば」

大橋社長

 建設機械業界は2015年、新興国での需要低迷に苦しんだ。中国では需要が前年の半分ほどに落ち込み、南米や豪州では鉱山機械の新車投資抑制が響いた。北米など先進国の需要は堅調だが、新興国市場の減速を補うほどの力強さは期待できそうにない。どのように16年に臨むのか。国内最大手、コマツの大橋徹二社長に聞いた。

 ―16年の世界の建機需要をどう見ますか。
 「15年と比べると、おそらく低くなるのでは。需要が増える地域が少ないのは間違いない。ただ、米国は史上2番目に強い需要があり、このレベルを維持してくれれば。日本の建設投資は、震災復興や老朽施設の更新などでしばらく堅い」

 ―中国の需要低迷は続くと見ていますか。
 「地方政府がかなりの規模の債券を発行し、身動きできる条件が整ってきた。状況としては良くなってきた。ただ、春節商戦には正直期待していない。通常の生産の範囲内で乗り切れるだろう。春節に需要の4割が集中するが、15年1―3月の需要は4分の1以下だった。春節による季節変動がなかった。今後も季節変動がなくなるのかわからない」

 ―鉱山機械の需要はいつ頃回復すると見ていますか。
 「鉱山機械の需要は今が底に近い。いまの生産量から落ちることはないが、いつ戻るだろうか。3年ほどすれば戻るかもしれない。鉱物資源価格の下落は厳しく、必要に迫られない限り新車投入は厳しい。世界中の主要鉱山のトップと会って話しているが、16年は彼らは投資できないだろう。大手ほど生産コストの低い、良質な鉱山を抱えている。いまは少ない台数の入れ替えや、オーバーホールがあるぐらいだ」

 ―国土交通省が公共事業に情報通信技術(ICT)を活用する方針を発表しました。新事業「スマートコンストラクション」にとってのメリットは。
 「我々が考えている土木建設工事と似ており、驚くとともにうれしい。全体の流れとして似ており、国の方向性に貢献できる。土木現場は昔からあまり変わっていない。若い人が希望して集まるようになっていない。土木作業員は30年には100万人以上不足すると言われている。ICTによる半自動化でカバーすれば良い。若い人が面白いと思って土木現場に入ってきてくれるかもしれない」

【記者の目・将来に向け体制見直す好機】
 中国一国の需要低迷で、建機業界の業績は大きく落ち込んだ。それだけ、中国への依存度の高さが浮き彫りになった。日立建機の早期退職特別募集も、こうした事態への危機感の表れだ。鉱山機械の投資抑制を含め、建機業界は大きな試練に直面している。だが従来も、地域ごとに需要の浮き沈みを経験してきた。今回も冷静に対応している印象だ。

 見方を変えれば、いまは将来を見据えて体制を立て直す好機だ。知恵を絞り、一連の対策を実行することが後々効いてくる。長期的には新興国でのインフラ投資需要は旺盛だ。先進国ではICT活用の普及も見込める。建機業界の将来を悲観する必要は決してない。
(聞き手=戸村智幸)
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
現在を「平時」(特に中国)と考えたオペレーションモードに入っていると感じた。「スマートコンストラクション」をどのように収益に結び付けていくかをみたい。

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