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世界規模のEV量産厳しく…GMとの協業広げるホンダの危機感

世界規模のEV量産厳しく…GMとの協業広げるホンダの危機感

三部敏宏社長

ホンダが米ゼネラル・モーターズ(GM)との協業を広げる背景には、電気自動車(EV)戦略で後れを取っているとの危機感がある。欧米の完成車メーカーなどが電動化戦略を積極的に進めている中、ホンダが単独で世界市場を攻めていくのは厳しい状況だ。世界で人気が高い小型スポーツ多目的車(SUV)などの量販に乗り出すにあたり、GMとの提携拡大はコストを抑え、消費者に受け入れられやすい価格のEVの創出につながる。(江上佑美子)

EVの大きな課題となっているのが電池だ。EVコストの約4割を占めるとされるが、大幅な引き下げは難しい。ホンダとGMは2024年に北米地域でEVの量販モデル第1弾「プロローグ」などの大型SUV2機種を発売する方針を示している。27年以降に小型SUVを市場投入するにあたり、多くの消費者に受け入れられるためにも、コスト低減は大きな課題となる。

両社はプロローグの共同開発などを通じて培ってきた「ウインウインな関係」(青山真二ホンダ執行役専務)を深化し、この課題の解決を図る。生産においては、両社の既存工場を活用する方針だ。EVの生産設備の新設には大規模投資が必須だが、両社の経営資源を活用することで、投資負担を抑えられる。

国内の完成車メーカーも相次ぎ電動化戦略を打ち出している。トヨタ自動車は30年までにEVの開発や生産に4兆円を投じ、世界で30車種のEVを投入。EVの世界販売台数を350万台に引き上げ量産効果を取り込む。

日産自動車、仏ルノー、三菱自動車の3社連合は26年度までに約3兆円を投じ、30年までに35車種のEVを投入する。小型SUVなどの「Bセグメント」でも車台や電池の共用を推進。量産効果を最大化する方針だ。ホンダも単独でコスト競争力のあるEVを世界規模で量産するのは難しいと判断し、GMとの協業強化に踏み切ったとみられる。

次世代電池の領域についても協業を検討する。ホンダは全固体電池を今後のEVのコア要素と見込んでおり、量産を視野に国内で生産技術の検証をしている。GMはリチウム金属電池やシリコン電池、全固体電池などの技術や生産方法について研究開発を進めている。知見を持ち寄ることで高性能電池の迅速な開発、実用化につなげる構えだ。

ホンダは21年4月、40年に全世界で発売する新車を全てEVもしくは燃料電池車(FCV)にする計画を掲げた。一方で現時点で販売しているEVは「ホンダe」などわずかだ。22年3月にはソニーグループとEV領域で連携すると発表したが「ホンダ全体のEV戦略とは一線を画す」(三部敏宏社長)。今回のGMとの協業強化は世界規模での数百万台の生産につながる点で、インパクトがある。

日刊工業新聞2022年4月6日

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