トヨタ紡織社長・沼毅氏/トヨタ連合の開拓に軸
―2021年度は中期経営計画の1年目でした。手応えは。
「21年4月にチーフオフィサー制度、カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)の専門部署を設けるなど、さらなる成長に向けて組織と仕組みを整備した。(コロナ禍で)生産台数が減った時は改善に取り組み、多能工化などを進めた。大きな変化がありながらも稼ぐ力、ネガティブなことがあってもチャレンジする力が付いてきた」
―22年の見通しは。
「22年から(コロナ禍などが)収束していくと思っていたが不透明だ。半導体不足などがどうなっていくかも読めない。まずは22年前半の事業環境を見極めていく」
―主要顧客のトヨタ自動車以外の売上比率を30年度に2割以上(21年度見込みは8%)にする計画を掲げています。
「目標達成に向け、まずはトヨタとアライアンス(連合)を組む自動車メーカーを開拓していく。従来から取引のあるサプライヤーなどとの連携が重要になる。当社のどの製品であれば、効果的に連携できるか分かってきた。マツダ系のデルタ工業(広島県府中町)、東洋シート(同海田町)などと連携強化に向け体制を整えている。トヨタ以外の仕事を増やし、内装システムサプライヤーとしてグローバル競争で負けないようにする」
―トヨタが30年の電気自動車(EV)の販売目標を200万台(燃料電池車含む)から350万台に引き上げました。対応は。
「当社が手がけるモーターコアはEVに使える。さらに巻き線も取り扱うなどモーター周辺で手を広げたい。アッシー化で(モーターコアに)付加価値を付けていく」
―トヨタ系部品メーカー6社でMaaS(乗り物のサービス化)社会をにらんだ車室空間コンセプト「MX221」を開発しました。
「シェアリングサービス向けの挑戦は、将来の事業展開の足がかりになる。自動運転が進むと(内装全体の企画開発を担う)『インテリアスペースクリエイター』としての提案が重要になる。シートなど個別製品の力を高めることと、インテリアスペースクリエイターの取り組みを同時並行できるようになってきている」
【記者の目/車室空間に付加価値提案】
電動化や自動運転の進展で車室空間の重要性は増す。トヨタ紡織はインテリアスペースクリエイターとしての進化を急ぐ。付加価値の高い車室空間の提案には幅広いニーズに対応し、主力のシートでより上流の設計から提案できる技術力が欠かせない。トヨタ以外の受注を増やす取り組みは、そのための助けになる。(名古屋・山岸渉)