社員10人からクックパッドはこうやってグロースした(下)
文=山口豪志(デフタキャピタル アクセラレーター)第2創業期にジョインした新卒1号営業マンが語る3つのポイント
**食品業界の産業構造を理解せよ!求められるポジショニングの確立
クックパッドという会社が提供するBtoBのマーケティング支援事業、広告事業は既存の雑誌広告などのマス広告のリプレイスという形で市場に受け入れられました。
ただ、そうであるならば、他の資金力のある企業が同じように追随することで、我々のポジションがすぐに奪われかねません。その危機感は、多少なりとも広告業界に関われば感じるものです。クライアントの要望は常に『より良い結果を!去年とは違う面白いものを!』ーなのです。
不安定な立ち位置から脱却するためには、産業構造の中にしっかりと根を張り、その位置を確固たるものにする必要がありました。各種生物も環境に適応する過程でそうであるように、ビジネス界でも特定業界において不可欠な存在でなければ生き残れません。
クックパッドは、食品業界とは切っても切り離せない関係です。食品業界により深く根を張るにはまず産業構造を理解することが何より必要でした。
食品メーカーは、小売りの店頭にどれだけ品物を並べてもらえるかが、売り上げを左右する非常に大きな要素です。ですから、メーカーのキャンペーンは流通の棚取り(店頭での売り場確保)が最大の関心事なのです。
上長をはじめ、我々は早くからその構造を理解し、食品流通各社とのコミュニケーションを密にとりました。共同でお惣菜の開発や店頭でのレシピカード配布などが一例です。ただ、それらの取り組みだけでは不十分であることも、途中から分かってきました。
食品流通において卸会社、商社はとても大きい存在です。彼らの意向は、メーカーより国(農水省、環境省)や原産国の動向が影響を与えます。クックパッドとして、それらの会社から信頼を得るため、それぞれに求められるデータ・情報を提供しました。
その結果、商社や卸会社と組んでオリーブオイル原産国の日本国内での拡販キャンペーンや地球温暖化対策のための国民運動『チームマイナス6%』という国家プロジェクトの案件を受注するまでになりました。
産業構造にポジションを築いていく中で、ビジネスが回り始めクックパッドは食品業界と切っても切れない関係をつくることに成功しました。
その後のクックパッドの躍進は、私が詳細を知る由もありませんが、「会員事業」による利用者から月額課金が順調に成長し、BtoBビジネスモデルから、BtoCモデルへと鮮やかに進化しました。それにより、社会に対してより大きな影響を与えるサービス企業になっています。
最後に、あの時期、あの船に同乗していた仲間の素晴らしさを強調しておきます。世間から『素人のレシピに価値は無い』と言われていた頃に、インターネットのレシピサイトに価値を見出し集ったメンバーは、管理部門もエンジニアチームも含め、時代の先見性を持った“本質主義者”の集団だったように思います。
『毎日の料理を楽しみに』『料理を楽しみにすることで心からの笑顔を増やす』ー。
シンプルながら、強いメッセージを持った企業理念に心底共感して集まったクックパッドの同僚を今でも誇りに感じています。
そして、この時間にも発展し続けているクックパッドは、私にとって常に刺激を与えてくれる「旧友」のような存在であり、これから何をしてくれるのかという期待感にワクワクしています。
※本原稿を寄稿させて頂くにあたり、同志としてクックパッドでご一緒した小竹貴子氏と森下満成氏に監修して頂きました。改めて御礼を申し上げます。
前の記事はこちら
社員10人からクックパッドはこうやってグロースした(上)
社員10人からクックパッドはこうやってグロースした(中)
クックパッドという会社が提供するBtoBのマーケティング支援事業、広告事業は既存の雑誌広告などのマス広告のリプレイスという形で市場に受け入れられました。
ただ、そうであるならば、他の資金力のある企業が同じように追随することで、我々のポジションがすぐに奪われかねません。その危機感は、多少なりとも広告業界に関われば感じるものです。クライアントの要望は常に『より良い結果を!去年とは違う面白いものを!』ーなのです。
不安定な立ち位置から脱却するためには、産業構造の中にしっかりと根を張り、その位置を確固たるものにする必要がありました。各種生物も環境に適応する過程でそうであるように、ビジネス界でも特定業界において不可欠な存在でなければ生き残れません。
クックパッドは、食品業界とは切っても切り離せない関係です。食品業界により深く根を張るにはまず産業構造を理解することが何より必要でした。
食品メーカーは、小売りの店頭にどれだけ品物を並べてもらえるかが、売り上げを左右する非常に大きな要素です。ですから、メーカーのキャンペーンは流通の棚取り(店頭での売り場確保)が最大の関心事なのです。
上長をはじめ、我々は早くからその構造を理解し、食品流通各社とのコミュニケーションを密にとりました。共同でお惣菜の開発や店頭でのレシピカード配布などが一例です。ただ、それらの取り組みだけでは不十分であることも、途中から分かってきました。
食品流通において卸会社、商社はとても大きい存在です。彼らの意向は、メーカーより国(農水省、環境省)や原産国の動向が影響を与えます。クックパッドとして、それらの会社から信頼を得るため、それぞれに求められるデータ・情報を提供しました。
その結果、商社や卸会社と組んでオリーブオイル原産国の日本国内での拡販キャンペーンや地球温暖化対策のための国民運動『チームマイナス6%』という国家プロジェクトの案件を受注するまでになりました。
産業構造にポジションを築いていく中で、ビジネスが回り始めクックパッドは食品業界と切っても切れない関係をつくることに成功しました。
その後のクックパッドの躍進は、私が詳細を知る由もありませんが、「会員事業」による利用者から月額課金が順調に成長し、BtoBビジネスモデルから、BtoCモデルへと鮮やかに進化しました。それにより、社会に対してより大きな影響を与えるサービス企業になっています。
最後に、あの時期、あの船に同乗していた仲間の素晴らしさを強調しておきます。世間から『素人のレシピに価値は無い』と言われていた頃に、インターネットのレシピサイトに価値を見出し集ったメンバーは、管理部門もエンジニアチームも含め、時代の先見性を持った“本質主義者”の集団だったように思います。
『毎日の料理を楽しみに』『料理を楽しみにすることで心からの笑顔を増やす』ー。
シンプルながら、強いメッセージを持った企業理念に心底共感して集まったクックパッドの同僚を今でも誇りに感じています。
そして、この時間にも発展し続けているクックパッドは、私にとって常に刺激を与えてくれる「旧友」のような存在であり、これから何をしてくれるのかという期待感にワクワクしています。
※本原稿を寄稿させて頂くにあたり、同志としてクックパッドでご一緒した小竹貴子氏と森下満成氏に監修して頂きました。改めて御礼を申し上げます。
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社員10人からクックパッドはこうやってグロースした(中)
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