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安価・軽量・高エネ密度、レアメタルフリー有機リチウムイオン電池が生まれた!

東北大学多元物質科学研究所の小林弘明助教、本間格教授と米カリフォルニア大学ロサンゼルス校の勝山湧斗大学院生らは、現行リチウムイオン電池より高い4ボルトで動作する、レアメタルフリーの有機リチウムイオン電池を開発した。低分子有機化合物のクロコン酸を正極材料に使うことで、高電圧動作を実現した。リチウムイオン電池以外に全固体電池やマグネシウム電池などにも利用でき、レアメタルを使わない安価で軽い高エネルギー密度蓄電池の開発につながると期待される。

炭素同士が五角形に結合したクロコン酸は、酸化還元反応が可能な炭素―酸素結合を5個持つ。また、1分子当たり最大4個の電子を貯蔵でき、これを酸化還元反応に利用できれば理論容量はコバルト系正極材料の4倍以上が見込める。

だが、これまでは五つの炭素―酸素結合のうち二つしか利用できておらず、動作電圧も2ボルト以下だった。

研究グループは、電子の運動など基本的な原理をもとにした第一原理計算により、従来使われていた結合とは別の二つの結合で、4ボルト超の酸化還元電位を示すことを発見した。

電解液などを工夫することで、この二つの炭素―酸素結合による反応を利用することに成功した。実際にクロコン酸を正極に用いたリチウムイオン電池を作り、4ボルトでの繰り返し放電を確認した。

一方で、高い理論容量は生かせておらず、今後、分子設計などを検討し、高容量と高電圧の両立を目指す。

電池の高電圧化は高エネルギー化に直結する。現行のリチウムイオン電池の動作電圧は3・7ボルト程度。有機物正極材料の場合は大半が3ボルト以下だった。

日刊工業新聞2022年3月21日

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