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新型「キャラバン」が日産連合の実力占う試金石になるワケ

新型「キャラバン」が日産連合の実力占う試金石になるワケ

日産のラインアップでは、国内唯一のディーゼル車となる「キャラバン」

日産自動車は商用バン「キャラバン」のディーゼル車を大幅改良して4月下旬に発売する。連合を組む三菱自動車製の新型ディーゼルエンジンを採用し、燃費性能を向上するなど商品力の底上げを図った。日産にとって国内唯一のディーゼル車のためにエンジンを開発するのは負担が大きかった。一方、三菱自にはエンジン供給による量産効果などが期待される。新型車の売れ行きは連合の有効性を示す指標ともなる。(西沢亮)

「新規制に対応するには新たなエンジンの開発が必要だった」。日産第三製品開発本部の大林和弘車両開発主管は、1月に施行された排出ガス測定法(WLTP)に対応するには、現行の同社製ディーゼルエンジン「YD25」の改良では難しかったと振り返る。

一方、キャラバン専用のエンジン開発では投資回収が見込めず、三菱自が開発を進めていたディーゼルエンジン「4N16」を採用することにした。日産は4N16に7速の自動変速機(AT)を組み合わせ燃費を従来比12%向上。特に高速域では動力性能だけでなく静粛性も高め、長距離運転の負担を軽減した。車線逸脱警報(LDW)の採用などで先進安全装備も強化した。

キャラバンが属する国内小型キャブオーバーバン市場の規模は約10万台。うち法人利用向けの量販グレードが約6割、個人利用の上級グレードが約4割を占める。競合はシェア約7割を占めるトヨタ自動車の「ハイエース」のみ。燃費など競合を上回る商品力で法人需要の巻き返しを図る。一方、個人では職人らが仕事で使うだけでなく、キャンプなど趣味での利用が増加。内外装を充実した最上級グレードを新規設定するなどプライベート需要の取り込みも狙う。

キャラバンではガソリン車とディーゼル車の販売割合が半分ずつを占める。2021年10月に大幅改良して発売したガソリン車では受注が前年比30%増と好調に推移。下取りではミニバンなど乗用車比率が同5ポイント増の約4割を占め、最上級グレードがけん引する。

ガソリン車では上級以上のグレードの比率が前年の約2割から足元で3割を超える。日本マーケティング本部の山本聡チーフマーケティングマネージャーはディーゼル車でも「上級比率を3割に上げたい」と意気込む。

経営再建中の日産は23年度までに車種数を18年度比2割削減する構造改革を進める。継続を決めたキャラバンでは三菱自のディーゼル技術を選択することで弱みを補った。また開発では日産が排ガス後処理装置を手がけ、三菱自のエンジン制御ソフトに合わせるなど複雑な工程を乗り越えた。日産は連合を組む各社の技術を資産と捉え、その技術を商品に仕上げる力も身につける。電動化など次世代技術だけでなく、既存の商品でも競争力を維持する上で連合の存在感は高まりそうだ。

日刊工業新聞2022年3月21日

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