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東芝の医療事業の売却先に浮上した富士フイルム。最新画像診断をサポートとは

人工知能&ビッグデータ活用、肺・肝臓がん類似症例を検索
東芝の医療事業の売却先に浮上した富士フイルム。最新画像診断をサポートとは

過去の症例画像をモニター上で比較し、がんを診断できる

 富士フイルムが開発した肺がん・肝臓がんの類似症例検索システム「シナプスケースマッチ」の利用が広がっている。人工知能技術を使い、がん病変の特徴が類似した画像を症例データベース(DB)から瞬時に検索し、画像診断をサポートする。医療機関は画像をビッグデータとして活用し診断を効率化できる。2015年度内に約20施設で同システムが稼働する見込み。今後は検索できる疾患も順次増やしていく。

 シナプスケースマッチは富士フイルムが静岡がんセンターと共同開発した業界初のシステム。確定診断のついた肺がん(1000例)と肝臓がん(300例)の症例DBを搭載しており、登録された過去のコンピューター断層撮影装置(CT)画像などを自動検索できるのが特徴だ。複雑で多様な病変部の画像を形状やサイズなどの特徴によって分類・数値化し、画像の類似性を定量化することができる。

 肺がんと肝臓がんはともに罹患(りかん)者数や死亡数が多い疾患で、CT検査などでの早期診断が重要になる。ただ進行していない早期がんの確定診断は簡単ではない。医師によってCT画像の読影技術にも差がある。がんの診断時に過去の症例画像を参考にしたい場合、「従来はDBから文字検索で目的の画像を探さなければならず、手間と時間がかかっていた」(久永隆治富士フイルムメディカルシステム事業部ITソリューション部)。

教育用途でも活用、新興国など海外への展開も


 画像解析・人工知能技術を搭載したシナプスケースマッチはモニター表示した現在の画像に対し、病変部を指示するだけで類似画像を症例DBから自動検索。わずか数秒で探し出された画像は似ている順にモニターに表示される。医師は現在の診断画像とDBの画像を見比べ、過去の診断結果などを参考にしてがんを診断できるようになった。

 シナプスケースマッチを導入した医療機関は確定診断のついた肺がん・肝臓がんの症例DBを拡張することも可能だ。症例を追加登録・蓄積していくことで、施設ごとに医用画像をビッグデータとして活用できる。症例の母数が増えればがんの診断精度が高まり、難しい症例に対しても対応力が増す。

 また実際の診断サポートだけではなく、教育用途でも活用が進む。経験の少ない若い医師や研修医でもシステムを直感的に操作でき、国内有数のがん診療施設である静岡がんセンターの症例を使って「画像診断を効率的に学ぶことができる」(同)。

 特に難しい症例などはがんの専門施設や大規模病院に集中することが多く、その診断に関わる医師は限られている。症例DBから人工知能技術によって検索された類似症例を数多く比較するなど、経験豊富な専門医がこれまで実際に診断してきたことを疑似的に体験することは若い医師や研修医のスキル向上に役立つ。国内だけではなく、医療従事者のレベルを平準的に高め医療の高度化を図りたい新興国など海外への展開も検討していく。
(文=宮川康祐)
日刊工業新聞2015年12月28日モノづくり面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
東芝の子会社、東芝メディカルシステムズの入札手続きは1月中にも始まる見通し。東芝側は株式の51%以上を売却する考えで売却額は数億円規模か。富士フイルム以外にもキヤノン、ソニー、GE子会社などさまざまな名前が売却先候補としてあがっている。特に東芝の強い分野は画像診断系。国内シェアは3割弱とトップ、世界でも4位。機器だけでなくこれまでのビッグデータも活用できるのであれば魅力だろう。

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