終値1万9033円で締めた!4年連続のアゲアゲだが果たして来年は?
日本取引所グループ(JPX)は30日、東京証券取引所で今年最後の取引となる大納会を終えた。同日の日経平均株価の終値は前日比51円48銭高の1万9033円71銭。今年1年の上げ幅は1582円94銭で、大納会の終値としては4年連続の上昇となった。
取引終了後のセレモニーには、抽選で選ばれた一般参加者や証券業界関係者多数が約600人参加。あいさつでJPXの清田瞭グループ最高経営責任者(CEO)は「15年ぶりの日経平均2万円超えや8月のチャイナショックもあったが、一年終えてみると総じて堅調だった」と今年の相場を総括。ゲストとして参加した指揮者の佐渡裕氏が鐘を5回鳴らした後、参加者全員で手締めを行った。
2015年は日本にとって節目の年だった。戦後70年、世界中で地域紛争や戦争が続くなか、侵略や殺戮(さつりく)を受けずに、高度な経済成長を遂げ、平和と繁栄を最大限享受したのが日本国民である。そうしたラッキーな環境を日本に提供した「戦後レジーム」は終わり、世界は新たな枠組みに動いている。この大きな国際社会の枠組みの変動について、私はこの8月に『この国を縛り続ける金融・戦争・契約』(共著、ビジネス社)に著した。世界の大勢が変わる時、金融システムにも変化が起こってくる。16年にはパラダイムシフトがいっそう顕在化してくるだろう。
事例として、1971年「ニクソンショック」が挙げられる。政治的なニクソンショックでは、米国が日本を頭越しに電撃的な訪中を果たした。国際金融面では、ドルと金との兌換(だかん)停止で、戦後ブレトンウッズ体制が解体し、変動相場制へと移行した。日本は安定した円安を支えた固定相場制の基盤を失った。
70年代は2度にわたるオイルショックで、世界経済はインフレ不況に苦しんだ。特に日本では「狂乱物価」に見舞われた。あれから40年たち、米国は原油輸出を一部解禁し、「エネルギー独立」に踏み出した。石油輸出国機構(OPEC)、ロシア、イランなど産油国は減産をしないため供給過剰となり、原油安が続く見込みである。
しばらくは原油や資源価格の高騰で70年代のようなインフレが起こる可能性は低いと見られる。産油国など資源輸出国にとっては赤字財政が重い負担となるだろう。
私は年明け以降、円高トレンドを予想している。これは、ドル安誘導政策で急激な円高となった85年「プラザ合意」を彷彿(ほうふつ)させる動きとなるだろう。
ただし、30年前の日本は円高不況を防ぐために超低金利政策をとり、国内ではバブル生成を招いたが、この種のバブルが再び起こることはないと見られる。
米連邦準備制度理事会(FRB)は、今年最後に利上げに踏み切ったが、日銀と欧州中央銀行(ECB)はFRBの代わりに金融緩和策を拡大している。折しも、日銀は先週金曜、新たな上場投資信託(ETF)の買い入れなど金融緩和の補完を行ったばかりだ。
このとき、日経平均株価は515円上昇したものの、午後には366円安と乱高下した。日本の株価上昇を支えるエネルギーはあまり残っていないようだ。
今も終わってみれば、エネルギー資源、食料、軍事、IT、金融、技術革新の分野において、「米国の一人勝ち」が鮮明に見えてくる。金融市場だけを見ていると、FRBによる利上げの意味が見えて来ない。
しかし、プラザ合意の後、日本から大量の資金が対米投資に向かったように、日欧の量的緩和でじゃぶじゃぶの資金が米国への投資に向かうだろう。
※日刊工業新聞で毎週金曜日に「国際金融市場を読む」を連載中
取引終了後のセレモニーには、抽選で選ばれた一般参加者や証券業界関係者多数が約600人参加。あいさつでJPXの清田瞭グループ最高経営責任者(CEO)は「15年ぶりの日経平均2万円超えや8月のチャイナショックもあったが、一年終えてみると総じて堅調だった」と今年の相場を総括。ゲストとして参加した指揮者の佐渡裕氏が鐘を5回鳴らした後、参加者全員で手締めを行った。
国際金融市場、年明けは円高トレンドか
日刊工業新聞2015年12月25日付
国際金融アナリスト兼SAIL社長・大井幸子
2015年は日本にとって節目の年だった。戦後70年、世界中で地域紛争や戦争が続くなか、侵略や殺戮(さつりく)を受けずに、高度な経済成長を遂げ、平和と繁栄を最大限享受したのが日本国民である。そうしたラッキーな環境を日本に提供した「戦後レジーム」は終わり、世界は新たな枠組みに動いている。この大きな国際社会の枠組みの変動について、私はこの8月に『この国を縛り続ける金融・戦争・契約』(共著、ビジネス社)に著した。世界の大勢が変わる時、金融システムにも変化が起こってくる。16年にはパラダイムシフトがいっそう顕在化してくるだろう。
事例として、1971年「ニクソンショック」が挙げられる。政治的なニクソンショックでは、米国が日本を頭越しに電撃的な訪中を果たした。国際金融面では、ドルと金との兌換(だかん)停止で、戦後ブレトンウッズ体制が解体し、変動相場制へと移行した。日本は安定した円安を支えた固定相場制の基盤を失った。
70年代は2度にわたるオイルショックで、世界経済はインフレ不況に苦しんだ。特に日本では「狂乱物価」に見舞われた。あれから40年たち、米国は原油輸出を一部解禁し、「エネルギー独立」に踏み出した。石油輸出国機構(OPEC)、ロシア、イランなど産油国は減産をしないため供給過剰となり、原油安が続く見込みである。
しばらくは原油や資源価格の高騰で70年代のようなインフレが起こる可能性は低いと見られる。産油国など資源輸出国にとっては赤字財政が重い負担となるだろう。
私は年明け以降、円高トレンドを予想している。これは、ドル安誘導政策で急激な円高となった85年「プラザ合意」を彷彿(ほうふつ)させる動きとなるだろう。
ただし、30年前の日本は円高不況を防ぐために超低金利政策をとり、国内ではバブル生成を招いたが、この種のバブルが再び起こることはないと見られる。
米連邦準備制度理事会(FRB)は、今年最後に利上げに踏み切ったが、日銀と欧州中央銀行(ECB)はFRBの代わりに金融緩和策を拡大している。折しも、日銀は先週金曜、新たな上場投資信託(ETF)の買い入れなど金融緩和の補完を行ったばかりだ。
このとき、日経平均株価は515円上昇したものの、午後には366円安と乱高下した。日本の株価上昇を支えるエネルギーはあまり残っていないようだ。
今も終わってみれば、エネルギー資源、食料、軍事、IT、金融、技術革新の分野において、「米国の一人勝ち」が鮮明に見えてくる。金融市場だけを見ていると、FRBによる利上げの意味が見えて来ない。
しかし、プラザ合意の後、日本から大量の資金が対米投資に向かったように、日欧の量的緩和でじゃぶじゃぶの資金が米国への投資に向かうだろう。
※日刊工業新聞で毎週金曜日に「国際金融市場を読む」を連載中
日刊工業新聞電子版2015年12月30日