ドライアイ根本治療薬に道、北大が解明したこと
北海道大学大学院の木原章雄教授らは、涙に含まれる極長鎖アルコールがドライアイを防ぐことを突き止めた。涙液表面にある油層中で、この極長鎖アルコールを産生する酵素を発見した。同酵素を持たず、極長鎖アルコールを作れないマウスは、重篤なドライアイになった。現在、ドライアイを改善する根本治療薬はまだ存在しない。涙液油層を標的とする新たな治療薬開発につながると期待される。
涙液油層は、涙液の蒸発を防いで角膜を守っている。涙液油層中の脂質の多くは、長鎖のアルコールを含むが、それらの役割や産生機構は不明だった。
研究グループは、長鎖アルコール産生に関わる酵素を探索。活性化した脂肪酸からアルコールを作る反応を触媒するFar2という酵素が、炭素数26の極長鎖アルコールを多く産生することを突き止めた。
そこで、Far2を欠損させたマウスを人工的に作製し、眼への影響を調べた。すると、眼表面からの水分蒸散量の増加と角膜の傷害が進んでおり、極長鎖アルコールが作れないとドライアイになることが分かった。
野生型マウスの涙液油層中にあるマイバム脂質は液体だが、Far2欠損マウスでは同脂質の融点が49度Cに上がり、固体や半液体となる。そのため、まぶた縁にある脂質の出口に詰まってしまう。
日刊工業新聞2022年3月7日