車載用電池材を増強、住友鉱山がまとめた6030億円投資計画の全容
住友金属鉱山は2022―24年度の中期経営計画を策定し、車載用のニッケル系電池正極材の生産能力増強などを盛り込んだ。全社の設備投資と投融資の合計は前中計3年間の2・5倍となる約6030億円。脱炭素などのため研究開発費は同3割増の約250億円を見込む。ただ成長分野の大型プロジェクトはいずれも海外案件で、コロナ禍などで始動が遅れている。リスクに向き合いつつ“挽回投資”で成果を上げられるか注目される。(編集委員・山中久仁昭)
「長期ビジョンに掲げた『世界の非鉄リーダー』にふさわしい、中身の充実が課題」。住友金属鉱山の野崎明社長はこのほど開いた中計発表会見の冒頭でこう強調した。
同社は成長戦略と事業基盤強化の両面で持続的成長を目指す。経営基盤を強化するため、資本の効率活用の度合いを測る指標のROCE(使用資本利益率)を導入。目標値を5・5%とし、各事業の収益性を管理する。
総投資額のうち設備投資は約4940億円で、製錬に約60%、材料に約20%、資源に約15%を向ける。金額の大幅増は、前中計期間はコロナ禍などで予定額の約半分しか実施できず、その繰り延べ分を含んでいるためだ。
電池正極材の生産では、30年度までに現状3倍超の月産1万5000トン体制を構築する。顧客の動向をみて海外などで新工場を建設する。「すり合わせが必要だから顧客の近くに立地したい」(野崎社長)という。
インドネシアのポマラプロジェクトは電動車向けニッケル年産4万トンに向けて、立ち遅れている投資の意思決定を急ぐ。20年代後半の始動を目指す。
チリのケブラダ・ブランカ2(QB2)プロジェクトは22年後半の生産開始を予定。24年度に自社権益分で年産約7万トンを見込む。カナダのコテ金開発プロジェクトは23年前半の生産開始を目指す。
国内最大級の金鉱山である菱刈鉱山(鹿児島県伊佐市)は持続可能な生産体制に向け年6トンから年4・4トンの採掘へと転換する。
全社で温室効果ガス(GHG)排出量を削減するため、3年間で総額120億円の環境投資を行う。デジタル変革(DX)には約150億円を投資する。
大型プロジェクトの推進やコアビジネスの持続可能性向上とともに、脱炭素化やDXなど社会変化への対応を進め、次の成長を見据える。