無人運行実現に不可欠、VFRなどが開発したドローン“基地”の性能
VFR(東京都千代田区)、ACSL、センシンロボティクス(東京都渋谷区)、SUNDRED(同)の4社は、飛行ロボット(ドローン)の自動離発着や充電ができる「ドローンポート」を共同開発した。年内に発売し、2023年に国内で100基以上の販売を目指す。ドローンの社会実装には「基地」となるドローンポートが不可欠。本格的な無人運航を実現し、ドローンビジネスを加速させたい考えだ。(編集委員・嶋田歩)
「自動飛行のドローンと言っても、実際は複数人のスタッフが現地へ向かい、いろいろな準備をする必要がある」。VFRの湯浅浩一郎社長はドローン運用の実情を説明する。
準備に時間がかかるほか、山奥のインフラ点検や離島輸送では現地に行くだけでも相当の労力が必要だ。ドローンポートがあれば運用はワンオペですべて可能になり、「在宅診療し薬はドローンが届ける」など自動作業や無人化が可能になる。
ポートの外部は積雪や夏場の直射日光に耐えられる耐環境性のシェルター構造で、ドローンはシェルターの開閉により自動離発着する。着陸の床板には充電機構があり、電力残量が減ったドローンに補給を行う。これにより飛行時間を延伸することも可能になる。
開シェルター時の大きさは幅4125ミリ×奥行き1650ミリ×高さ1180ミリメートルで、定格電圧はAC100ボルト。発光ダイオード(LED)照明により夜間運航にも対応でき、ドローン機体はACSLの「PF2」に対応。ゆくゆくは同社の「蒼天」などほかの機体にも拡大予定だ。
工場点検ドローンポートを、いざという時に警察署や消防署が共同使用する「シェアリングビジネスも可能になる」(吉井太郎センシンロボティクス執行役員)とみている。自治体による橋の点検や石油化学コンビナートの工場点検、電力会社の太陽光パネル点検などの情報をビッグデータ(大量データ)として蓄積し、故障予測など新事業に生かせる。
一方、ドローンポートは悪用すればドローンの乗っ取りやデータ抜き取りなどスパイ用や軍事用にも使えるだけに、セキュリティー担保が不可欠だ。「だからこそ、国産であることが意味を持つ」。ACSLの鷲谷聡之社長は強調する。半導体部品などもすべて国産で、コロナ禍や物流の混乱で外国製部品が日本へ入ってこなくても影響はないという。
海外でも今後ドローンポートを開発し、ドローンやドローンメーカーを囲い込む動きが予想される。現時点で先行する日本に求められるのは、パートナー作り。パートナー数が多いほど、ドローンポートの有効性や使い勝手も増す。22年はその努力の1年になる。