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東京で初めて近代絵画中心の美術館を開館、ブリヂストン創業者の思い

東京で初めて近代絵画中心の美術館を開館、ブリヂストン創業者の思い

建築分野の数々の賞を受賞した「ミュージアムタワー京橋」低層階にある

石橋財団ブリヂストン美術館は館名変更を経て2020年、「アーティゾン美術館」として生まれ変わった。美(アート)の地平(ホライゾン)を多くの方に感じてほしいという願いを込めた。新設された23階建て「ミュージアムタワー京橋」の低層階にあり、都市型美術館らしくデザイン性も高い。東京・京橋にできた芸術と文化の新拠点「京橋彩区」エリアの中心にある。

藤島武二「東洋振り」(1924年 アーティゾン美術館蔵)4月10日まで開催中の「はじまりから、いま。」展にて初公開

ブリヂストンの創業者・石橋正二郎は1952年、東京で初となる近代絵画を中心とした美術館を開館した。正二郎はかねて「コレクションを個人で秘蔵するよりも、美術館を建て文化の進歩に尽くしたい」との思いがあり、米国各地の美術館を訪れて創設を決意したという。当時の日本は戦後復興のさなかであり、美術館は都民の心のよりどころとなった。

正二郎が本格的に絵画の収集を始めたのは、小学校時代の図画教師だった洋画家・坂本繁二郎との再会がきっかけ。坂本から若くして亡くなった同郷の画家・青木繁の作品が散逸しないよう集めてほしいと懇願されたそうだ。その後、近代洋画の巨匠・藤島武二とも懇意になり、藤島作品もコレクションに加わる。

さらに「これら洋画家たちの作品と、彼らが手本にしたフランスの画家の作品を一緒に並べたら光彩を放つだろう」と考え、西洋美術も精力的に収集した。正二郎は「明るい絵が好き」で、特に印象派を好んだそう。

新美術館のコンセプトは「創造の体感」。鑑賞の場を提供するだけでなく、見る、感じる、知ることで作品の創造性を体感してもらう狙いだという。収集活動を継続的に行っているのも同館の特徴。従来の日本近代洋画、印象派、20世紀美術に加え、古美術や現代美術にも幅を広げ、新たな収蔵品も公開している。

2022年、開館後70年目を迎えた。開催中の「はじまりから、いま。」展では財団コレクションの軌跡が見られる。

【メモ】▽開館時間(通常)=10―18時▽休館日=月曜日(祝日の場合は翌平日)など▽入館料=展覧会により異なる▽最寄り駅=JR中央線ほか「東京駅」▽住所=東京都中央区京橋1の7の2▽電話番号=050・5541・8600
日刊工業新聞2022年2月11日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
石橋正二郎は福岡県久留米市に生まれ、17歳で家業の仕立屋を継いだ後、ゴムを用いた地下足袋を商品化して成功を収めた。やがて自動車タイヤに着目し、1931年に現在のブリヂストンを創業してタイヤの国産化を成し遂げ、日本を代表する企業に育て上げた。一方で、「世の人々の楽しみと幸福(しあわせ)のために」と、若いころから文化事業に取り組み、生涯に複数の美術館や文化施設を作ったほか、九州医学専門学校(現・久留米大学)の創立を支援するなど教育にも多大な功績を残した。

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