レーザーで食感や味を最適化「でんぷん3Dプリンター」が面白い【動画あり】
山形大学の相磯孝輔大学院生と川上勝プロジェクト准教授、古川英光教授らは、でんぷんの糊(こ)化を利用したフード3Dプリンターを開発した。でんぷん分散液を積層し、レーザーで加熱して固める。かまぼこやスイートポテト程度の硬さに固められた。食感が均質なフードペーストを積層して形を作るのでなく、食材内部に含水量や硬さの違う組織を配置できる。
でんぷん分散液を青色レーザーで加熱する。温度が上がるとでんぷん粒子が膨潤し、さらに熱を加えると水分が失われて最終的には焦げる。でんぷんのもととしてコーンスターチ、青色レーザーの吸光剤として卵黄を利用した。黄色は青の補色に当たる。卵黄には青い光を吸収する成分が多いと考えられる。
実験ではコーンスターチ4割、卵黄2割、水4割のフードプリント溶液を作製し、1ミリメートル厚で積層した。固める部分に青色レーザーを走査し、照射総量で硬さを調整する。造形体を圧縮試験して硬さを測ると、弾性率で45キロパスカルと、かまぼこ以上うどん未満の硬さを造形できた。
レーザー照射でフードペーストを焼く研究例はあったが、レーザーの熱で固める食材造形システムはなかったという。レーザーは光学的に細く絞れるため、ペーストを吐出する造形システムに比べて微細な組織構造を作り込める可能性がある。表面を焦がす過程で糖類のキャラメル化を制御すれば、食材の組織構造による食感と甘みや苦みなどの味の配置を最適化できると期待される。内閣府の「戦略的イノベーション創造プログラム」(SIP)の支援を受けた。
日刊工業新聞2022年2月2日