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ファシリテーターが選ぶ「2015年この3本」#01 電機大騒動

ファシリテーターが選ぶ「2015年この3本」#01 電機大騒動

井深さん(左)と東芝旧経営陣(右上)、シャープ新旧経営陣

 今年は何と言っても大手電機メーカーの「大騒動」に尽きる。記者として長くこの業界を見てきたこともあるが、背景は違うとはいえ、東芝シャープがこうもあっけなく「会社のカタチ」を無くしていくことに衝撃と寂しさと悔しさが入り交じっている。というわけで、3本はすべて電機業界の話題。

●ソニー創業者・井深大が2400人の幹部に発したパラダイムシフトという遺言
http://newswitch.jp/p/2478
 そんな中でソニー創業者の井深大さんの貴重な映像を文章に書き起こしたこの記事はとても反響が大きかった。ソニーの知り合いの現役社員やOBの方々からも数多くコメントをもらった。自分がファシリテーターを務めた記事の中でもアクセスが最も多かったのもこれ。たまに自分も読み返している。

 本文を読んでもらえば分かるが、経営者、思想家として井深さんはものが違う。写真は東芝やシャープの歴代経営陣に「お前ら、しっかりしろ!」という風に見えるが、それすらおこがましいように思う。

 井深さんの発言を通して「パラダイムシフト」という言葉が一つのテーマになっているが、電機業界に限らず日本のあらゆる産業で突きつけられている課題だ。最近は、将来の業績や事業環境から市場で「電機ソニー1強」なる見方も出ているが、ソニーの経営陣や社員も「井深さんに鼻で笑われる」と自覚していると信じたい。

●揺れる東芝「社長交代」過去3回の会見で語られたこと
http://newswitch.jp/p/1407
 東芝の不正会計発覚後、ニュースイッチでは「揺れる東芝」という見出しで随時記事をアップしてきた。ただの速報ニュースというわけではなく、過去に日刊工業新聞で掲載した記事を振り返りながら、現在の状況を検証していく手法をとった。ほかのウェブメディアではあまりないキュレーションだが、報道の検証や情報の読み解き方としても意義があると思っている。社長交代のトピックだけでなく、各事業ごとや他社との比較なども記事化した。

 社長交代の会見はどこの企業であれ、新社長は「前任の○○さんの路線を引き継いで」というのがお決まり。でも本心はそんな事は思っていないし、社長になって態度が豹変するケースもよくある。東芝の西田氏、佐々木氏のリレーはまさにそうだった。企業体質の問題もあるが、今回の不正会計のトリガーは米原子力会社ウエスチングハウスの無謀な買収だったと考える。

●シャープの変調はすでに2004年から始まっていた!「世界の亀山」稼働の裏で
http://newswitch.jp/p/411
 過去の記事の振り返りということでは、これが最初だった。2004年はまさに自分が液晶産業を担当していて、東京にいながら町田社長や役員も定期的に取材していた。実は「シャープのおかげて今の自分がある」と感じるほどこの会社にはいろいな思いがあり、記者として感謝する気持ちの方が多い。ぜひ立ち直ってもらいたい。

 ただし、「ジャパンディスプレイは本当にシャープの液晶事業が必要なのか」というタイトルで何度か記事をアップしたが、今の再編スキームはいただけない。
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
来年は東芝、シャープを起点に電機業界の再編がまだまだ起こる。成長軌道に乗ろうとしているソニーにも要注目。再編対象として面白いのは半導体。ルネサスの突然のCEOの交代もあったし。

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