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「本格回復」は望み薄!?粗鋼生産は年明け後も低水準

2016年1―3月期も前年同期を下回る見通し
「本格回復」は望み薄!?粗鋼生産は年明け後も低水準

粗鋼生産量は年明け以降もしばらく前年割れが続きそうだ(神戸製鋼所加古川製鉄所)

 間もなく新しい年を迎えるが、鉄鋼業界は今の厳しい事業環境が改まる気配はない。国内の粗鋼生産量も、少なくとも2016年1―3月期は前年同期を下回ると見られる。需要が本格的に回復し、鉄鋼各社による足元の減産が解除されるのは、早くて4月以降になりそうだ。

最も悲観的なのは電炉


 日本鉄鋼連盟の柿木厚司会長(JFEスチール社長)は16日の定例会見で16年1―3月期の粗鋼生産量見通しを聞かれ、「(15年10―12月期見込み並みの)2660万トン強の需要はあるだろう」と比較的、楽観的な口調で予想を披露した。ただ、この数字は前年同期には及ばない。

 15年1―3月期はそれまでの”巡航速度“の生産水準からブレーキがかかり始めた時期でもある。この秋口まで各社首脳とも「16年1―3月期になれば前年同期を上回ってくる」と口をそろえていたが、今の足元の需要動向からすると、もはや望み薄。新日鉄住金では最適な生産水準から5%程度少ない減産が3月まで続くことになる。

 最も悲観的な見通しを立てているのが普通鋼電炉業界。「来年前半は氷河期。(08年の)リーマン・ショックに近いところまで行く。とても『良いお年をお迎え下さい』と言えない」。普通鋼電炉工業会の野村寛会長(JFE条鋼)は、独特の表現で業界の置かれた苦境を説明する。主要ユーザーである建築業界の10月の生産数値が軒並み悪化。「この数字が我々の業界まで響いてくるのが6カ月先になるので、来年4月までダメなのはほぼ確定」と肩を落とす。

機会損失と明るい兆し


 1年3カ月後に迫った消費増税前の駆け込み需要や東京五輪の関連需要などで、後半からは回復が期待できる。ただ、それでも安心していない。「必ず何かの材料が足りないとボトルネックが発生する。工期は決まっているので、それによってほかの鋼材の機会損失につながる。発注をできるだけ前倒しして平準化してもらいたい」(野村会長)と訴える。

 もっとも、一部では明るい兆しも出始めている。H形鋼では「流通筋から在庫の歯抜けが出てきたという声がだいぶ聞かれるようになった」(新日鉄住金)ほか、ステンレスでも「緩やかではあるが、周りがにぎやかになっている。昨年に比べると注文は高いレベル」(新日鉄住金ステンレス)と、回復傾向が鮮明になってきた。厚鋼板も「造船向けが良いのであまり問題ない。工作機械向けはそれなりで、鉄骨もまずまず」(中部鋼鈑)という状況だ。

 輸出は中国の生産調整の遅れなどが響き、しばらく回復が望めない。厳しい冬の1―3月期を乗り切るべく、国内の比較的堅調な分野で下支えすることが欠かせない。
日刊工業新聞2015年12月22日 素材面
村上毅
村上毅 Murakami Tsuyoshi 編集局ニュースセンター デスク
四半期で2660万トンの需要は、年間換算で1億600トン弱。力強さは乏しい。国内の住宅着工にしても、マンション販売にしてもそう悪くないことを考えると、やはり輸出の鈍化が響いているようだ。

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