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半導体に“不安材料”…工場で爆発事故、「高純度赤リン」の安定供給に影

化合物半導体やシリコンウエハーの製造に必要な高純度赤リンに、供給不足の懸念が生じている。高純度赤リンは日本化学工業とラサ工業が世界的にシェアを二分するが、半導体市場の旺盛な需要により同材料の需要も想定以上に高まっている。日本化学工業が生産能力の増強を進める中、6日にラサ工業の三本木工場(宮城県大崎市)で爆発事故が発生し、影響が危惧されている。原料となる黄リンの高騰も含め、今後の展開が注目される。

高純度赤リンは、化合物半導体材料のインジウムリン(InP)などの原料やシリコンウエハー製造のドーパント(機能向上のために混入する不純物)材料、光通信向けの受発光素子材料として用いる。パワーデバイス市場や光通信デバイスにおける需要拡大に伴い、需要が高まっている材料だ。

日本化学 急速な需要増に対応

需要増加に対し、日本化学工業は2021年4月に福島第二工場(福島県三春町)に高純度赤リンの生産棟を新設・稼働した。約3億円の投資で生産能力を従来比2倍にした。だが、想定以上の急速な需要増加により、8月に約8000万円の追加投資を開始。7割ほど稼働していた新生産棟の残りのスペースにも設備を導入し、22年春―夏ごろの稼働を目指して対応を急いでいる。

しかし、活況を素直に喜べる状況ではない。高純度赤リンの原料は黄リンだが、輸入価格が高騰している。貿易統計によれば、黄リンが大半を占めるとされる「りん」の輸入単価は、21年11月に1トン56万6368円と、2カ月前の9月と比べて約70%高騰した。最大生産国の中国で供給量が減少し、急激に値上がりしている。

ラサ工業 工場で爆発事故

加えて、6日にラサ工業の高純度赤リンを製造する唯一の拠点である三本木工場で爆発事故が発生。17日から在庫の出荷を再開するが、13日時点で生産の再開は未定。シェア上位2社のうち1社の稼働が止まり、影響が危惧されている。

日本化学工業の阿部康弘営業本部第二グループリーダーは「年明け以降、問い合わせの声は増える一方だ。キャパシティー不足の解消を進めているが、厳しい」と不安の声を上げる。さらなる生産体制を構築しようにも、「福島第二工場敷地内に余裕がないため、他製品含め生産関連設備を全体的に見直す必要がある」という。

日刊工業新聞2022年1月17日

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