コロナ禍で在宅勤務率8割達成、なぜカシオ計算機は成果を出せたのか
カシオ計算機は、安定性と安全性を両立したネットワーク環境を構築し、リモートワークの定着を図る。東日本大震災直後から、出社できない状況でも稼働する業務システムの整備に着手。これをベースに、コロナ禍ではネットワーク強化と端末配備を進め、在宅勤務を導入した。現在でも約半数がリモートワークを実施するなど成果を生んでいる。事業継続計画(BCP)と働き方改革の連動させた取り組みが、成功のカギだ。
カシオの大熊真次郎デジタル統轄部情報開発部長は「製品の製造や販売など、どの業務もITを切り離すことができない。ネットワークにおけるBCPはサービス全体で非常に重要だ」と強調する。2020年1月下旬に対策本部を立ち上げ、対応を始めた。
在宅勤務で増加するインターネット利用に備え、仮想私設網(VPN)用の専用回線を用意するなど安定したリモートワーク環境を整備。さらにモバイルパソコンを持たない社員には自宅のパソコンから社内パソコンに安全にアクセスできるシステムを準備した。コロナ禍で1度目の緊急事態宣言が出された20年4―5月の在宅勤務率は約8割を達成した。
迅速な対応の背景には、働き方改革を通じたBCPへの取り組みがある。同社は当初、東京五輪の混雑回避を見据えてリモートワーク導入を進めてきた。コロナ禍で計画を前倒しで進めた。
大熊部長は「BCP対策は改善を続けていくことが重要だ」と話す。一般的に同社も導入するVPNは、アクセスポイントへのサイバー攻撃のリスクがある。大熊部長は「端末の状態やユーザーを常にモニタリングする『ゼロトラスト方式』への転換を進め、安全性向上を目指す」と説明する。
BCPは、災害時など緊急時の対応として求められる。リモートワークといった新たな働き方と連動しながら平時から取り組むことで、その実行性は高まる。