自動車部品メーカーが地域貢献の事業化を活発化する事情

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東海理化は地域に寄り添い、新事業のニーズを探る(古民家を改装し住民に開放しているコミュニティースペース)

自動車部品メーカーが、地域貢献活動を事業化する取り組みを活発化している。東海理化は従業員が福島県会津若松市などの地域課題に寄り添い、ニーズを探る。住友理工は愛知県小牧市の事業で高齢者の健康測定を手がける。トヨタケ工業(愛知県豊田市)は、地域の自然を生かしたマウンテンバイクのツアーを実施する。地域課題解決を通じ自動車部品事業の人材育成などにつなげる狙いもある。(名古屋・山岸渉)

余剰野菜、子どもたちに

東海理化の下地修一郎ニュービジネスマーケティング部主幹は、会津若松市に2020年に移住した。

同社は同市のスマートシティー構想に参画し、20年11月に情報通信技術(ICT)オフィス「アイクト」で拠点を開設した。だが下地主幹は「(アイクトでの)議論の中に市民がいない。これでは地域の困り事は分からない」と実感した。

そこで地域課題を探るために動きだして知ったのが、同市の湊地区という過疎地域。同地区で作られる野菜は高齢化の影響で半分以上が破棄されていた。一方で、同市中心市街地には1日1回しか食事をとれない子どもが一定程度いる課題を知った。下地主幹らは収穫を手伝い、計約2トンの野菜を計650世帯に食糧支援として届ける取り組みを21年7―11月に実施。「捨てずに済んで助かっているなどの声をもらった」(下地主幹)。今後は野菜を必要な人に効率的に届ける仕組みなどを作りたいと考える。また古民家を地域住民が集まるコミュニティースペースに改装するなど地域に寄りそう活動を続けている。

同社は会津若松市のほか、沖縄県本部町で軽石漂着の除去、福島県南相馬市では震災復興を見据えた梅酒の販売促進など地域に根ざした活動を通じ、各地域課題のニーズを探っている。

同社がこうした活動に取り組むのは、地域住民に寄り添わないと本当にニーズのあるものが分からないと考えるからだ。さらに下地主幹は「地域の信頼を得ないと課題解決の取り組みをさせてもらえない」と強調する。

高齢者の虚弱測定 企業価値向上に一役、優れた人材呼び水に

自動車部品メーカーは従来、自動車メーカーからの発注を元に部品を生産して納入するなど、受け身の姿勢であることが多かった。だが、自動車業界がCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)といった大変革期を迎えており、競争相手は異業種を含めて多岐にわたる。今まで手がけてきた部品を受注し続けることが難しくなる可能性がある。

それだけに「(会津若松市の取り組みなどで)世の中が何を求めているかを肌で感じられる人材を増やす。自ら行動するといった人材育成のサイクルを作りたい」(東海理化の栗栖秀人総務部長)と意気込む。地域貢献活動が、新たなビジネス獲得だけでなく自動車部品事業に取り組む上での人材育成につながると期待する。今後、22年4月入社の大卒新入社員に会津若松市などでの取り組みを体験させることを検討する。

地域貢献の取り組みが、優れた人材を集めるための呼び水になるとみる向きもある。住友理工は主力拠点のある愛知県小牧市で高齢者の市民に対し、加齢に伴い身体機能や認知機能が衰えるフレイル(虚弱)を測定する取り組みを21年10月から開始した。フレイル測定には同社のゴム製体圧検知センサー「スマートラバー(SR)センサー」を活用したマットを使う。

清水和志社長は「当社の得意技術を使い、地に足の付いた地域貢献をすることで、企業価値が高まり地域の良い人材を集められる」と分析する。

住友理工は地域貢献が優秀な人材確保につながるとみる(小牧市でのフレイル測定)

緑豊かな自然、自転車で案内 多様な働き方を提案

自動車用シートカバーを製造するトヨタケ工業は豊田市内の自然豊かな稲武地域に本社を構える。週に平日3日は同社の事業所で、土日2日は稲武地域でのツアーガイドとして働く、多様な働き方を提案する。こうした生活環境を呼び水に稲武地区への移住、地域活性化などにつなげる考えだ。

関連団体の「OPEN INABU実行委員会」が、マウンテンバイクのトレイルツアーを20年11月から本格的に事業として始めた。稲武地域の山林部で地権者の許可を得るなどし、専用コースを設けた。トヨタケ工業の横田幸史朗社長は「『小学1年生からどうぞ』と初心者用の走りやすいコースにしている」と説明。実際にトレイルツアーのガイドとして同社の従業員2人(21年12月時点)がいるという。

トヨタケ工業はマウンテンバイクのトレイルツアーによる新たな働き方を新たな採用や発想につなげる

横田社長は「地域資源を生かしたマウンテンバイクの取り組みによって優秀な若手が当社に入社するなど、地域を盛り上げてくれている」と一定の手応えを示す。

また横田社長は「視野を広げたり、さまざまな経験を積んだりすることは大事だ」とも話す。自動車部品に関わる本業とマウンテンバイクのトレイル事業と併せて取り組むことが、自動車業界の変革期に対応できるような人材育成につながると実感する。

自動車業界は裾野が広いだけに地域との一体感も重要だ。地域貢献の取り組みが、新たな知見となって部品メーカーの変革を後押ししそうだ。

日刊工業新聞2022年1月7日

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