太陽電池の効率向上へ、東大が酸化スズにタングステンを添加すると赤外光を反射せず透明になる理由を解明
東京大学の広瀬靖准教授と長谷川哲也教授は名古屋工業大学と筑波大学と共同で、透明電極として用いられる酸化スズにタングステンを添加すると赤外光を反射せず透明になる理由を突き止めた。結晶中で酸素とタングステンの電子軌道が混成し散乱が抑えられていた。近赤外光利用太陽電池の開発において基礎的な知見になる。
酸化スズにタングステンを不純物として加えた単結晶薄膜を作製した。波長2マイクロメートル(マイクロは100万分の1)の赤外光の透過率が約80%と、赤外光を透過しつつ電極として働く。
この単結晶が赤外光に対して透明な理由を調べると、4価のスズイオンより1価多い5価のイオンとしてタングステンが存在していた。これがイオン化不純物散乱を抑える。
タングステンが5価のイオンとして存在する理由を第一原理計算で調べると、周囲の酸素と電子が混成軌道を作って安定していた。この原理を利用し、赤外透明電極の性能を高める。
太陽電池は可視光に加えて赤外光を利用して発電効率を高める模索がされている。
日刊工業新聞2021年12月29日